レポート

Report

【Expanding story ~まるがめの市民活動~】自身の経験から踏み出す一歩。「香川県リトルベビーサークル ぴっぴっ子」

マルタスでは、市民活動登録を行う皆さんに、活動に対する思いやこれからのことなどをインタビューしています。
皆さんが行う「市民活動」とは何なのか?活動に対する「思い」とは?
それぞれの活動のスタート、これまで、そしてこれからをお伺いしています。
ぜひ皆さんの活動や思い、踏み出した一歩をご覧ください。

低体重出生児(リトルベビー)の認知・理解を深めたいと活動されている「香川県リトルベビーサークル ぴっぴっ子」。リトルベビーを持つご家族の交流の場を作ることで、社会での孤立を無くし、気軽に相談やお話しのできるつながりを作っています。
今回は、同団体代表の大西さんにお話しを聞きました。

リトルベビーの認知のため、一歩を踏み出す

市民活動登録された理由を教えてください。

この建物があることは知っていましたが、マルタスがどのような施設かは知りませんでした。一緒に活動している仲間から、「マルタスの市民活動登録してみない?」ということを聞き、相談に行きました。すると、マルタスで部屋を借りたり、展示をしたりすることができることを知りました。いろいろな方が利用される施設ですので、私たちの活動も当事者だけではなく、たくさんの人に発信していける場だと思い市民活動登録をしました。


それまではどこで活動されていたのですか?

ちょうどコロナ禍のときでしたので、主にオンラインで活動していました。

団体の立ち上げはいつごろでしょうか。

2022年11月ころに活動を始めました。その後、今一緒に活動しているメンバーが入って今に至ります。

活動自体を始めようと思われたのはなぜですか。

自分自身も28週の早産児で生まれました。そして、私の上の子も24週の早産で生まれました。当初は周りに早産児を育てている方もいなかったのですが、私の母や叔母、祖母が「あなたも小さく生まれても元気に育っているので大丈夫」と声を掛けてくれたことがとても心強かったです。
でも、やっぱりいろいろスマホで検索してしまって。スマホで調べると「早産で生まれて、こういう後遺症が残った」のような結果が載っていることが多いんです。でも知りたいのは不安をあおられるそういう情報ではないんですよね。
でもリトルベビーを育てたことがある方とお話しすると、その経験や成長している過程を聞くことができました。「今こんな状態なんだけど、どうしたらいいかな?」「どういう治療をしていますか?」など相談したり、その過程を聞いたりすることができて、励みになりましたし、そういうことが知りたかったと思いました。
早産児を育児している方の言葉には説得力があるし、支えられることがたくさんありました。そして、サークルを立ち上げることで、これから参加される方も前向きに育児ができたらいいなと思い活動を続けています。

一緒に活動される仲間とはどのように知り合ったのですか?

ぴっぴっ子のインスタを見てくださったことがきっかけです。一緒に活動してくださるとのことで、二人での活動が始まりました。

ぴっぴっ子さんの名前の由来は?

香川県の方言で、小さい子どもにうどんのことを「ぴっぴ」というのですが、それが由来です。おうどんのどんぶりに入るくらいの大きさの赤ちゃん、というとイメージしやすいかなと思ってこの名前をつけました。



主な活動目的を教えてください。

イベントでは、県内のリトルベビー(早産児)のご家族や早産児を集めて、マルタスでワークショップをしたり、その中でお話会を一緒にしたりしています。楽しくもの作りをしながら成長を残し、ご家族とのお話の場も作ることで、育児の相談をみんなでしていけたらと思っています。
リトルベビーを知らない方々にも知っていただく機会を作れたらいいなとの思いから、館内で何度か展示も行いました。




最初、マルタスへ相談にお越しいただいたときに、リトルベビーのハンドブックが香川県にないので作りたいということで、その活動もしたいということを伺いました。「リトルベビーハンドブック」はどのようなものですか。

私もSNSを見て、他の都道府県には「リトルベビーハンドブック」というものがあることを知りました。リトルベビーハンドブックは、小さく生まれたお子さんとご家族のための応援手帳です。
都道府県が作成するものですが、そのリトルベビーハンドブックを作るために、全国の至る所に私たちのようなサークルがあって、そのサークルの皆さんが都道府県などに要望を提出することで作成につながっていることを知りました。私が調べたときには、リトルベビーハンドブックがある都道府県は40を超えていました。全国に前例があったことで、2024年4月に香川県独自のリトルベビーハンドブックができました。



香川県との話はスムーズに進みましたか?

2023年2月に県に要望を提出しましたが、予算が固まっていない状況と、それまで香川県でそういった声を出した方もいなかったので、1回保留となりました。その後、担当の方が変わって、前向きに捉えてくださって。もう一度、サークルとして「リトルベビーハンドブックを作ってほしい」という意見書を提出すると「やります」と言ってくださいました。
部数は多くはありませんでしたが、いろいろな都道府県のリトルベビーハンドブックを参考にして、いいところを盛り込んで作成しました。リトルベビーを育てるご家族の方やリトルベビーとして生まれて大きくなった方のメッセージを入れて、香川県独自のハンドブックが完成しました。私たちの言葉も掲載していただいています。

リトルベビーハンドブックはどこで手に入るのですか?

現在は各市町村の窓口で「早産児で産まれたので、リトルベビーハンドブックがほしい」と希望すると受け取ることができます。
母子手帳とは違い、成長曲線に色がついていないことも特長です。リトルベビーはどうしても平均よりも下回ってしまうので、成長曲線にとらわれずにその子の成長を感じられることができます。
また2年後に見直すときには時間と予算もとっていただける予定なので、今回のものを使っていただいた方の声なども聞きながら、香川県独自のものができればいいなと思います。

活動を広げる

活動登録されてから活動が広がった部分や新しい活動につながったことはありますか?

マルタスでの最初の活動が、2024年4月に行った展示です。最初だということもあり、まずはリトルベビーを知ってもらうところから始めようと思い、小さく生まれたお子さんの写真や母乳バンクについて展示しました。
あとは先ほど話したリトルベビーハンドブックがもうすぐできるというタイミングでしたので、それを紹介させていただきました。ほかにもリトルベビー用の小さいオムツをパンパースさんに提供してもらったり、ウエイトベアを置いたり、見ることでわかりやすいものを目指しました。
展示を見て、「早産児のことを初めて知った」「普通に生れてくるのが当たり前ではなかった」「母乳バンクに協力したいので調べてみる」と言ってくださった方もいらっしゃって、すごくよかったと思いましたね。



学生さんからも声が掛かっていましたね。

そうなんです。24週で産まれたという方がお母さんといらっしゃってお会いしました。その子が「自分が早産で産まれたことを母からずっと聞いていたので、自分はそういった道に進む」と話してくださって。今看護の学校に行っているときいて頑張ってほしいと思いました。

展示の際は、見た方の感想を書くノートを置いてくださっていますが、どういった感想が聞かれますか?

今(取材時:2024年12月)の展示でしたら、リトルベビーたちが小さく生まれたときの写真と今現在の成長した写真を飾りました。
「小さく生まれても大きく成長できるのが本当にすごい」と感想を書いてくださっている方がいましたね。あとは、展示させていただいているお子さんがご家族と一緒に来てくださって、その子がメッセージ書いてくれていました。成長を感じましたね。




新しく広げたい活動はありますか?

今はこじんまりとしていますが、香川県どこにいても、早産児とそのご家族がもっと多く触れ合えて、みんなが関われる環境を作っていきたいと考えています。四国こどもとおとなの医療センターの先生にお世話になっていますが、先生も「限定された子だけではなくて、週数、生まれた年もいろいろなので、多くの方が取り残されないようにしていきたい。一緒に成長を見守りたい」とおっしゃっています。ですので、先生の講義など、どこにいてもみんなが関われる環境を作っていきたいと頑張っています。また、先生たちも「リトルベビーハンドブック」や私たちのサークルについて入院しているお子さんのご家族に紹介してくださり、ご協力いただいています。コロナ禍も落ち着いたので、もっと集まれる機会を増えたらいいなと思いますね。
あとは、当事者のご家族だけではなく、保育士さんや地域で子どもたちと関わることがある方、早産児のことを知りたい方たちにも、もっとリトルベビーについて知ってもらいたいと思っていますので、講義や講演ができたらいいと思います。これは、私たちだけの力では限界がありますので、声を上げていきたいです。

今後の活動

6月には、育児休暇から復帰とのことですが、仕事をしながら活動を続けられるのですか?また、今後の目標があれば教えてください。

やっていきたいと思います。一緒に活動してくれるメンバーもいますし、サークルに参加してくれる方の中には、「サークルがあって良かった」「イベントにも参加したい」と言ってくださる方の声もあるので続けていきたいです。
これまで、なにか物事をすることに先頭立ってするタイプではなくて、どちらかというとお手伝いというか端っこにいるタイプでした。でも、この活動については、自分が早産児だったこと、上の子が早産児だったことで急に「しないといけない」と思ったんですよね。一歩踏み出せたことは良かったと思います。
また、妊娠中に仕事されている方への配慮ももっと進んでほしいと思います。妊娠中でも体力仕事や業務が変わらない人もいます。無理してしまう方もいると思うので、社会全体として変わってほしいです。早産児も保育所には入れますが、医者からは辞めた方がいいなどとアドバイスがあることもあり、仕事を辞めないといけない人もいます。そういうことに対しても臨機応変に対応できる社会であったら、地域で子どもが育てやすくなると思います。私は、早産児と普通の子を育てていますが、本当にいろいろな違いがあります。早産児は小さく生まれることだけではなくて、その先の成長も続いていきます。そういう意味でも、当事者だけではなくて、たくさんの人にリトルベビーについて知ってもらえる活動をしていきたいです。

あとは、リトルベビーで産まれた上の子が大きくなったら一緒に活動できればいいなと思っています。私も娘もそうでしたが、早産で産まれることで学年が変わってしまう方もいます。最初は差がありますが、そのうちそんなことは気にならないくらい成長していきます。娘の成長も目に見えてわかるので一緒に活動することで「自分のペースで成長できる、だれかと比べなくてもいい」そんなことが伝わったらいいなと思います。
私たちが間に立っていくことで、心の拠り所になれたらなと思いますので、たくさんの方に参加していただけたらと思います。

新たに市民活動を始められる方に一言メッセージをお願いします。

私も最初は一人でこの活動を始めて、やっていけるのか?何をしたらいいか?何もわからない状況で不安はありましたが、自分と同じ考えを持った方が集まってくれました。誰かのためになりますし、自分のやりがいにもなりますので、市民活動を通していろいろな仲間たちと出会ったり触れ合ったりしてもらえたらなと思います。