レポート

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ほんのこうさてん~本から始まる対話の場~ 2022.7.18(月)

7月18日(月)、「ほんのこうさてん~本から始まる対話の場~」が開催されました。
選書家/ブックセレクター、book pick orchestra代表の川上洋平さんをファシリテーターにお迎えし、大切な本やお気に入りの本についてお話をしながら、本の捉え方や接し方、本との新しい出会い方を体験できるイベントです。
イベントは、6月から8月にかけて各月1回ずつ開催され、今回は8名の方が参加されました。本に関する質問を川上さんが投げかけながら、その本を選ばれたストーリーや印象に残ったポイントなどを皆さんから紹介していただきました。


■講師プロフィール
川上洋平(選書家/ブックセレクター、book pick orchestra 代表)
本の魅力を深く見つめることから、人と本の出会いをつくる「book pick orchestra」代表。
美術館やホテル、カフェ、オフィス内のスペースへの選書から、葉書のように本を送る「文庫本葉書」、ひとりひとりに本を選ぶイベント「COFFEE TO BOOKS」、本から人をつなぐワークショップ「Sewing books」など、本を選ぶだけでなく、さまざまな場所で人と本のあいだをつなぐ体験をデザイン、企画している。
近年は、DIC川村記念美術館の作品に合わせ選書した「本好きのための美術案内」、梅田駅のルクア1100でのポップアップイベント「選書屋さん」、KYOTO STEAMのオンライン読書会「ほんとのはなし」、高松の予約制ライブラリー「kotelo」などを手掛ける。
HP:https://www.bookpickorchestra.com/

本との出会い

まず、自己紹介と自分の”推し”について話し、アイスブレイクをしました。皆さんの”推し”について思う存分聞いた後、1巡目は持ってきた本との出会いについて聞きました。中でも気になった出会いを一部紹介します。


「好きなバンドマンのお母さんがSNSで紹介していたのを見て、この本を購入しました。そのバンドには、大阪から香川県にツアーで回ってきたときに、ライブハウスで偶然出会い、はまりました。歌詞がすごく好きです」


「6月30日までに本とCDを断捨離しようと決心して実行しましたが、その中でも捨てられなかったのがこの本です。もともとは、2001年から2003年まで四国新聞に連載されていて、新聞を切り抜いて、休みの度に息子をここに載っていた里山に連れて行っていた思い出の本です。讃岐のぽこぽこした山の歴史や民俗学的な話が掲載されていて、子どもが自然に対して興味を持つような内容が掲載されています。社会人になった息子から、『親父、この山登りたいんやけど、里山の本持っていたよな?』とついこのあいだ聞かれ、貸しました。88の山を紹介していて、離島シリーズもあります」

他にも、母の本棚からや息子の旅立ちがきっかけの本など、様々な出会いがありました。



内容の繋がり

2巡目は本の内容の話です。印象的な場面や文章、ことばのお話を聞きました。

「『一言でいうと、毎日に感謝し、日々もっと賢く、もっとはやく、もっと幸せに生きる、やればできるという状況に感謝し、日々進歩していきたい』の文章が刺さりました。人に対して感謝がないと、事業にしても日常にしてもダメだと思っています」

「最近刺さったポイントが、「歓喜と感謝に振り替える」という文章です。今あることに感謝することが大事で、自分の思いを思い続けていたらそれはいつか現実化すると考えています」

話が進んでいく中で、「感謝」という言葉が共通点の本が何冊かあり、不思議なつながりを感じました。また、あまり聞きなじみのない「感覚的なものの言語化」についてのお話もありました。

「この本には2つほど、感覚的なことを言語化している文章がありますが、感覚的なことを箇条書きしようとしても言葉が見つからないと思います。でも、その感覚は確実に存在しているだろうと思ってみると、人生をクールに生きるためにも、何か物事をクールに成功させるためにも必要な感覚というのがこの世の中に存在しているのだろうと感じさせてくれます。
感覚的なことを言語化することに興味を持った理由は、空気を読みたいと思うようになったからです。
40人くらいをまとめる仕事をしているのですが、40人いたら、一人ひとりが違います。その集合体が、集団の空気を形成していて、何か問題が起こった時に、どこを押さえれば自分の望むことも叶えつつ、みんながいい感じになるのかというのを考えることが多いです。一人ひとりにどうして欲しいか聞いて、それを40個リストにしてつぶしたところでうまくいかないと思っていて、じゃあ、感覚的な何か”ツボ”みたいなものを探したらいいのではないかと思うようになりました」




このお話は実体験も交えた内容で、皆さん真剣に耳を傾けていました。



川上さんは、
「本の魅力って、読んでいる人が欠かせないことだと思っています。読んでいる人の体験が重なり合ったところが面白い。本と人の間というテーマでしていますが、本が同じでも人によって感じることが全然違います。読み始めと、読み返した後でも印象が変わります。そういったところが本の面白さだと考えています。このワークショップでは、本を読みたくなってほしいのはもちろん、人の魅力も感じてほしい。意見交換をしていて、例えばその人の仕事のことを知ると、また全然見え方が変わってくると思います。そこが人が関わっていることの面白さだと思います。今回、「ほんのこうさてん」を作ってみて、この交差点で人と本のつながりから、人と人のつながりもできるといいなと思います」
と話しました。

新しい考え方を得られるイベントとなり、終了後も話が途切れず、皆さんご歓談されていました。また、ほかの方が持ち寄られた本に興味津々で、新しいジャンルを開拓して読んでみたいという声もいただき、熱い会となりました。



【編集部より】
イベント後には、参加された皆さんの簡単な紹介パネルをマルタスの88の棚の部屋に展示しました。また、 8月28日(日)には、最後となる第3回を開催します。ふだん本をあまり読まない・読めないという方も、新たな本や人との出会いを体験したい方であれば大歓迎です。 皆さんとともに、本を通して様々な出会いが生まれる時間を一緒に過ごすことを楽しみにしています。

イベントページはこちら
https://marugame-marutasu.jp/event/hobbies/entry-5858.html