私のコミュニティ あなたのコモンズ 本・人・対話
| イベントレポート
近年、持続性のある地域の暮らしをつくる活動の一環として、「コミュニティ」という言葉を中心に、人と人のつながりをつくる取り組みが全国各地で行われております。マルタスでは、地域の課題解決や賑わいづくりに取り組む様々な市民活動が開催されており、その活動の一つ一つが、それぞれに個性のあるコミュニティであると思います。さらに昨今は、コミュニティの延長として、共通の価値観をもって利用し管理する共同体である「コモンズ」が議論され始めています。
そうした中で、6月からマルタスで実施しているイベント「ほんのこうさてん ~本から始まる対話の場~」では、人と本が出会う体験をデザイン・企画されている、選書家/ブックセレクター、book pick orchestra代表の川上洋平さんと一緒に、「価値観を共有する」という視点でのコミュニティやコモンズのあり方を、本を通して実践し検討する試みを行っています。
今回は、「ほんのこうさてん」で考えているコミュニティやコモンズをより深く考える会として、この地域に住まう方々のありのままの視点で考えるコミュニティやコモンズのあり方や理想像を、川上さんをはじめ参加者と一緒に対話を通して考え理解を深める会「私のコミュニティ あなたのコモンズ 本・人・対話」を開催しました。
■講師プロフィール
川上洋平(選書家/ブックセレクター、book pick orchestra 代表)
本の魅力を深く見つめることから、人と本の出会いをつくる「book pick orchestra」代表。
美術館やホテル、カフェ、オフィス内のスペースへの選書から、葉書のように本を送る「文庫本葉書」、ひとりひとりに本を選ぶイベント「COFFEE TO BOOKS」、本から人をつなぐワークショップ「Sewing books」など、本を選ぶだけでなく、さまざまな場所で人と本のあいだをつなぐ体験をデザイン、企画している。
近年は、DIC川村記念美術館の作品に合わせ選書した「本好きのための美術案内」、梅田駅のルクア1100でのポップアップイベント「選書屋さん」、KYOTO STEAMのオンライン読書会「ほんとのはなし」、高松の予約制ライブラリー「kotelo」などを手掛ける。
book pick orchestra のホームページはこちら(新しいウィンドウが開きます)
身近なコミュニティ・コモンズを探る
ー 川上さん
book pick orchestraは、約20年前に活動が始まりました。当時は、本との出会いをつくることが主なお仕事でしたが、最近は“人とどのように関わっていくか”という視点で、人との関わりをつくるお仕事が中心になってきています。そのお仕事の依頼を受ける中で、コミュニティ、あるいは、最近言われ始めているコモンズというものが、世の中的に求めらつつあるのではないかと思いました。ただ、社会的に議論されているコミュニティやコモンズが、実体としてどのようなものであるか、不明確なことも多々ある状況でした。そして今回「ほんのこうさてん ~本から始まる対話の場~」という取り組みを6月から開催し、「価値観を共有する」という視点でのコモンズのあり方の一つを提案しています。
そこで今回は、香川に住んでいる皆さんが感覚的に、ありのままの視点で、コミュニティやコモンズにどのようなイメージを持たれているか、あるいは、どのようなコミュニティやコモンズを実現したいかを、対話形式でお話しをさせていただき、色々な視点を共有し合えたらと思っています。
ワーク&グループディスカッション
今回は、コモンズについてご存知の方はもちろん、コモンズという言葉を初めて聞いたという方にもご参加いただきました。作り手さんの活動の場づくりをされている方、子育て中の方、通りすがりで気になって参加してくださった方、地域活性のプロジェクトに参加している大学生など、それぞれ背景の異なる9名の方にお集まりいただきました。
初めは、それぞれが考えるコミュニティやコモンズをワークシートに記入し、チームごとに分かれてそれぞれが考えるコミュニティやコモンズについて意見を交わしました。
【ワークシートの質問】
Q1.あなたにとってのコミュニティ・コモンズを教えてください。
Q2.なぜそれらが、あなたにとってのコミュニティ・コモンズだと思いますか?
Q3.あなたにとっての理想のコミュニティ・コモンズに求めるものを教えてください。
参加者が思うコミュニティ・コモンズ
Q1.あなたにとってのコミュニティ・コモンズを教えてください。
【Aグループ】
・コミュニティ:家族、学校、自治会、丸亀、自然、本、イベント
・コモンズ:家庭、職場、学校、マルタス、イベント
【Bグループ】
・コミュニティ:学校、研究室、スーパー、習い事、宿、病院、活動グループ
・コモンズ:大学、家族
【Cグループ】
・コミュニティ:自治体、Bar、喫茶店(気をつかわずに声をかけられる場所)
・コモンズ:農地、ゲストハウス、こたつ、お鍋
Q2.なぜそれらが、あなたにとってのコミュニティ・コモンズだと思いますか?
【Aグループ】
・コミュニティ:関わっている範囲がそれぞれ違うから
・コモンズ:わからない
【Bグループ】
・コミュニティ:目的があるから
・コモンズ:目的がないから(目的を強く意識した共同体ではない)
【Cグループ】
・コミュニティとコモンズ:強制力があるから(強制力の強度には違いがある)
コミュニティとコモンズという言葉に対する印象
Cグループの“強制力”という回答から、コミュニティとコモンズという言葉に対する印象(ポジティブかネガティブか)を伺ったところ、半数以上がポジティブでしたが、一方で、ネガティブイメージもありました。
ー 川上さん
ネガティブと回答された方にお聞きしたいのですが、なぜネガティブなイメージがあると思いますか。
ー Oさん
コミュニティは、共通した目的に向かって前進するイメージがありポジティブですが、コモンズは、資源を共有し合う場であると思うので、『共有しなければいけない』という強制力があり、個人の自由に制限がかかるという点でネガティブだと思います。どのように資源を共有し合うかという問題を解決するために、目的を共にしたコミュニティの概念が入ってくるとより良くなると思います。
ー Kさん
ポジティブになって欲しいという願いを込めているからこそのネガティブイメージと答えました。集団に帰属すると、どうしても多数派の意見が目立ってしまい、少数派の意見が受け入れられにくくなるという側面もあるのかなと。
ー 川上さん
コミュニティとコモンズという言葉から、自分の領域の外という印象も受けますが、皆さんの回答から、それらが地続きであるように感じます。スーパーは特に身近な場でもありますね。また、ポジティブかネガティブかという質問もさせていただきましたが、関わることがすべてポジティブではなく、ネガティブな側面もあるという点もポイントですね。
こたつとお鍋はコモンズ?
― 川上さん
こたつとお鍋はかなり距離感が近いというか、リアリティがあると思いましたが、なぜこたつとお鍋がコモンズだと思いましたか?
― Mさん
コモンズという言葉をあまり言語化できていないのであくまでイメージですが、そこに関係性がなくても共有できる場だからだと思います。こたつとお鍋があれば、はじめましての方でも意外と話せるというか。また、こたつという場があれば、テレビを見たり、話をしたり、場を共有しているけどそれぞれしたいことができるという絶妙な距離感を保てるから、こたつはコモンズかなと。
― 川上さん
なるほど。聞いていて面白いと思ったのは、こたつはかなり距離感が近いからコミュニティの濃度が高い場ですね。心を許せているかどうか、という基準が必要なコモンズでもありそうですね(笑)
― Gさん
知らない人どうしでないと、なかなか入りにくいイメージもありますね(笑)
― Yさん
以前丸亀でも、こたつを囲ってお酒を飲むイベントが開催されていましたよね。確か高知の文化だったかな?
― 川上さん
こたつを使うことで、その距離感まで寄せちゃうという発想かもしれませんね。ちなみに、はじめての方とこたつに入るという体験はありましたか?
― Mさん
普段は家族だけですね。ただ、今気づいたのは、屋台のおでん屋さんとこたつの違いって何だろうと。屋台のおでん屋さんは、人と人の間の距離感がこたつくらい近いと思いますが。
― Yさん
こたつは、足が触れ合う距離だけど、屋台のおでん屋は、一人一人のスペースが確保されているという違いがあるかもしれませんね。
― 川上さん
家族以外とこたつに一緒に入ったことがあるという方はどれくらいいらっしゃいますか?(4名の方が挙手)
それはどんな時ですか?
― Sさん
僕は宿を運営していて、こたつを用意しているのですが、冬はお客さまと一緒にこたつに入ってお話をすることがあります。知り合いであれば足を延ばすことができるのですが、さすがにお客さまがいらっしゃる時は足をのばすことはできませんね。
― 川上さん
でも、宿にいらっしゃったお客さまとは、こたつに一緒に入れるという事ですよね。
― Gさん
僕は職場の後輩の家で鍋をした時にこたつに一緒に入りました。仲の良い後輩なので、気軽に足を伸ばせます。
― 川上さん
良いですね。最近は、ハラスメントの問題で会社の後輩を飲みに誘いにくくなった、みたいなことも言われ始めていますよね。特に都心だと、そのような傾向にあるように感じます。
―(全員)
へー
― Yさん
主人のご実家に遊びに行ったときに、みんなでこたつに入りました。大人数だったので、ぎゅうぎゅうだったことを覚えています。
― 川上さん
半ば強制的かもしれませんね(笑)
会社と活動グループ
― 川上さん
職場をコモンズと回答されましたが、ポジティブですか?ネガティブですか?
― Yさん
どちらでもありますね(笑)。意見を言いやすいというのは職場の良い点だと思いますが、意見が通りくい時はネガティブかもしれません。
― 川上さん
コミュニティとしての活動グループとは、どのようなイメージですか。
― Oさん
常に目的に戻れる集まりというイメージですね。目的を持った活動グループは、目的があるからそのグループを維持できるのではないかと思います。
― 川上さん
会社とは違いますか?
― Oさん
会社とは少し違うイメージですね。会社は生活の糧であるので、やめにくいですよね。コミュニティは、共通の目的に沿って活動しているので、目的がなければやめられる。その違いかと思います。
理想のコミュニティ・コモンズ
最後に、「Q3.あなたにとっての理想のコミュニティ・コモンズに求めるものを教えてください。」について伺います。
― 川上さん
コミュニティやコモンズに求めるものを教えてください。
― Yさん
出入りが自由であったり、押し付けないという関係性ですね。
― Gさん
私はコミュニティをポジティブと捉えているので、来て良かったと思える心地よい関係性であればと思います。
― Yさん
ハードルの低さや自己の成長を感じられるコミュニティであればいいなと。
― 川上さん
なるほど。具体的に、こんなコミュニティがあったら、というイメージはありますか。
― Gさん
共通の趣味で集まって、話ができる環境があれば良いなと思います。私はランニングが好きなので、ランニング好きが集まれるコミュニティがあれば良いなと思っています(笑)
― Hさん
自分の役割と全体の方向性が自然につながる関係性があれば、居場所があると思える良いコミュニティだと思いました。でないと、全体の方向性に自分の役割が影響される感じがして、コミュニティが強制的になってしまうのかな。なので、全体と自分の方向性が一緒であれば、居心地の良いコミュニティかなと思います。
― 川上さん
分かりますね。一方で、とても難しくもありそうですね。そうした実体験はありますか。
― Hさん
自分が所属しているコミュニティで地域活動をしているのですが、指示されて行う活動よりも、みんながやりたいと思えることを行う方が、みんなが付いてきてくれたり、積極的に活動してくれるなと思いました。
― Oさん
私は、コミュニティは公平・平等、コモンズについては適度な距離感を保てることができたら理想だと思います。
― 川上さん
適度な距離感、大事な気もしますね。ちなみに、公平・平等を保つには、具体的にどのようなことを行えばよいか、イメージはありますか?
― Oさん
情報を共有することだと思います。組織になると、これがなかなかうまくいかないこともありますけどね。
― 川上さん
情報共有は、意外と盲点な感じがしますね。
― Oさん
定例会や、理事会というやり方もありますが、今はオンラインで情報共有会を行っています。オンラインによって、直接民主主義が実現できたかと。オンラインは、いつでも参加できる状態をつくることができるので、参加希望の方は参加しやすくなるし、参加できない方には議事録を共有しています。大事なのは、いつでも参加できるという状態をつくることだと思います。そうした状態を保てれば安心感や帰属感につながると思います。
― 川上さん
面白いですね。最近、民主主義の限界みたいなことが言われている気がしていて、この手法は気になるなと。
― Oさん
平等の範囲が限られているというところで成り立ってしまいますよね。
― 川上さん
他の方は、いかがでしょう?
― Sさん
私も、全体と自分の方向性というお話に共感しました。例えば、過疎化した地域に移住された方の視点に立ってみると、本来は自分の事業を行うために移住したけど、特にマスメディアからは「地域のために頑張っているんですよね」と聞かれがちのようで。結果的にその地域の活性化につながれば良いのですが、初めから地域のためにと思ってしまうと、次に移住される方のハードルが上がってしまうという側面もあるかと思います。個人の集合がグループなのか、グループの中の個人なのか、全く違う感じがします。私は、グループは個人の集合体だと思うので、自分の方向性が全体の方向性と合致していれば心地よいコミュニティという意見に共感しました。
― 川上さん
今までの皆さんのお話を伺っていて、いろんな視点があって面白いなと思いました。今お話してくださった方々は、自立度の高い方の集まりなのかなと。逆に、あまり目的がないが何かしたい、みたいな方にとっては、全体の一部だから入りやすいという側面もあるかもしれないなと思いました。例えば、阿波踊りなんかはそうかもしれないと。みんな踊っているから踊っていいよ、という雰囲気があり、あまり踊りに精通していなくても、何となく踊れるということもありそうな気がします。
― Mさん
私の理想のコミュニティは、自分の持ち味を表現できる場が心地よい場だなと思いましたが、皆さんのお話を伺っていると、段階によるなと思いました。強制されなくても良い場は居心地良い場所になると思いましたが、出会って間もない方との関係性を構築できるかというと、強制されていないという条件だけでは難しいかもしれないと。ただ居ても良いという環境では、その先に発展する関係性を構築することは難しいと思いました。
― Yさん
コミュニティに関わる立場によっても感じ方は違いますよね。例えば、何らかの活動を行うコミュニティをまとめる側であれば、ただ居られても困ってしまうと思うし、逆に入った方からすれば、居心地がいいのになぜ動かなければならないのかと感じると思います。そうしたジレンマが生じてしまうことも、コミュニティの難しい所ではあるのかなと思います。
― 川上さん
僕が今まで行ってきた本をベースとした活動は、元々は本を紹介するイベントでしたが、段々と人の関係性をつくる取り組みに発展しています。関係性を構築する上で意識していることは、役割以前の領域で話を盛り上げるということです。例えば、プロフィールを話すときには、「肩書がないと存在として認められない」というような感覚が前段としてどこかにあるように思うのですが、僕はそんなことはないと思っています。本人は価値がないと思っていることが話に出てきたときにこそ、他の方にとって興味深い話だったりすることもあります。
人に本を紹介するとき、面白い紹介をすることができる人とできない人の違いは、知識量ではないと気づきました。本の中身の話をしてなくても、本とその方の関わりの話がされているときが一番面白いなと思うことが多いんです。どんな人でも面白い側面が必ずあると思っていて、それを引き出す要素が本なのかなと思っています。僕が取り組んでいる本を使ったワークショップでは、本の話よりもその人の話を聞きたいと思っています。その方がその人ならではの興味深いポイントが出てくるんですよね。そこで共感ポイントが持てれは、こたつにも一緒に入れるかもしれません(笑)
さらに具体的に、どのようなことができる場があったら良いと思いますか?先程、その先の関係性とおっしゃられましたが、具体的にイメージがあればぜひ教えてください。
― Mさん
私が行っている活動の一つに、作家さんの発表の場を作っているのですが、そこで出会った方々が友達同士という関係性から次の活動につながったりしていて、発展性があり今後も続けていこうと思っています。ただ、ある程度のコミュニティが出来上がっているので、どこまで発展することができるのかなと。
コミュニティに属していないけど何となく誰かとつながりたい、と思っている方にとって新しい出会いが生まれる環境もあっても良いのかなと思っています。食堂のおばちゃんみたいな、人とのつながりをつくる仲介役みたいな人がいる環境があるといいのかなと思っています。積極的に誰かと関われる方はそこまで多くはないのかなと思っていて、ただ何かもやもやしているときに、ふと声をかけてつながりを作ってくれる人がいるといいのかなと思っています。
― 川上さん
なるほど。活動の場が広がるということもコミュニティのポイントですよね。友達になることと、活動を広げること、どちらが先でどっちが後なのか、ということを抑えることも、関係性を構築する上では重要なポイントかもしれませんね。
― Kさん
まったく知らない人や、旅先の居酒屋の店主のような、次に会う機会がない人だからこそ、物事を言いやすいという良さもあるかもしれないですね。たとえば、旅先の居酒屋の店主さんだから話せることがあるような。なので、最初にプロフィールを言わない、連絡先を交換しないなど、その場限りで話をできる環境というのは、とても気がらくで忌憚なき議論ができそうだと思いました。
― 川上さん
それもポイントかもしれませんね。僕もイベントを開催する時は、見える部分と見えない部分を設定することを意識しています。例えば、イベントで参加者の自己紹介をする時に肩書きを言わないこともあります。肩書きを意識して話をするよりも、フラットな状態で話をした方が、より気軽にその方の事を知ろうと思うし、話をすることができるようになると思っています。
他には、どのようなコミュニティやコモンズがあると良いと思いますか?
― Hさん
気兼ねなく一人で参加できる環境があると良いですね。知っている人と一緒に来ると、今日みたいに沢山話をしないかもしれません。普段と違う環境だからこそ気兼ねなく話ができるという良さがあります。
― 川上さん
確かにそうですね。普段とは違う環境だからこそ話せることがあるというのはポイントですね。目的をもって、同じ想いで活動する関係性も良いですが、ある程度やわらかい関係性も大切かもしれませんね。
色々お話を伺っていると、求めているつながりの強度の違いがあるかと思いましたが、皆さんはコミュニティで友達をつくることに対してどのように思われていますか?
― Nさん
私はどちらかというと、イベントはその場でピンときたときに参加するようにしています。それは、その場かぎりの縁といいますか。それが楽しかったなという余韻にひたれると思うし、次の日の活力になるので。なので、友達をつくることを強く求めすぎてしまうと、それが目的になってしまうし、少し気をつかってしまうので参加しにくくなりますね。
― 川上さん
マルタスのイベントも、食堂のおばちゃんみたいに「これどうですか?」と直接お誘いするのが良いかもしれませんね。
― Oさん
私は常にどこかに参加しているかもしれません。活動に限らず、自分で必要だと思うものがあれば何でも参加しています。そこで友達ができて、自分の活動につながることもありますね。
― 川上さん
自分の役割と全体の目的が同期されている感じがしますね。
― Oさん
そうですね。一緒に活動する人を集めることも大変でしたが、今は常にオープンな状態にしているので、いつでも活動に参加しても良いし、離れても良い、という状態を維持しています。コミュニティのしんどさをなくして、参加者自身が求めているところまで一緒に活動できるような気軽さをつくっています。そういった面で、お互いに気が楽ですね。
― 川上さん
目的があると集まりやすいですし、その目的を達成することを強制しないところも、継続して活動できる理由かもしれませんね。
― Gさん
私は、マルタスで開催される活動によく参加しているのですが、そこで知り合いになった方と次同じ場所でお会いできた時にお話しやすくなり、世間話できる程度の気軽な関係性ができることが好きですね。自然とつながる関係が一番良いのではないかなと思います。
― Kさん
私は理想的な距離感って何だろうと考えていたのですが、ゆるさと発展する可能性が混同しているコミュニティが理想なのかなと思いました。僕はスポーツクラブに所属しているのですが、もちろん全員と仲良くやっているのですが、その中でも一緒にご飯を食べに行ったりするなど良いお付き合いができている方が何名かいます。僕も友達を増やしたいと思っているので、ゆるさと発展性のあるコミュニティが理想だなと思いました。
― Yさん
私は、個人であったり団体であったり、つながりを作ってくれる場が欲しいなと思います。私たちの団体は、それほど大きな規模ではないので出来ることが少なく、だからこそつながりができれば出来ることが広がると思っています。一方で、つながりをつくることへの難しさを感じることもあります。だからこそ、食堂のおばちゃんみたいな仲介役的な人がいてくれる場があると助かりますね。まったくの他人ではなく、ちょっと親身な感じといいますか(笑)
【編集部より】
求められているコミュニティやコモンズとして、活動を行う場、気軽にかかわりあえる場、何かを相談できる場と、関わり方の強度がそれぞれ違った意見が出ましたが、コミュニティやコモンズにはポジティブとネガティブの両面があり、そうした中で持続的なコミュニティやコモンズの形成には、目的に対する自由度と強度のバランスをどのように保つかが重要かもしれません。関係性の強度が強いコミュニティやコモンズには、目的が明確である程度のルールや規則などの強制力があることで、次に発展する可能性があると思います。一方で、行き詰った時に相談したり、悩んだ時に背中を押してもらえるような、普段の環境では打ち解けられないことを話すことができる場も必要とされていのではないかと思いました。何かを話したい人が気軽に話をすることが出来るような、オープンに受け入れてくれる場は、心のケアにつながると思います。
今回のイベントは、答えや方法論を教えるのではなく、対話を通して自分なりの答えが見つけられることを目的に開催したイベントですが、イベント終了後も議論は絶えず、終始盛り上がりを見せたイベントでした。