レポート

Report

「まちがすきになる」一歩を耕す シャッターをあける会・まるがめ世話やき隊 紀伊孝彦さん

「ドライブスルーでエール飯in丸亀」や「ひろえば街が好きになる運動」など、丸亀市内を中心に様々な取り組みをされている紀伊孝彦さん。本業と並行し、「シャッターをあける会」と「まるがめ世話やき隊」の2つの市民活動団体で活動されています。数々の取り組みを始めた背景やその想いを伺いました。

「シャッターをあける会」と「まるがめ世話やき隊」

紀伊さんのお生まれは千葉県ですが、ご両親の転勤をきっかけに、すぐに丸亀に移り住みました。大学時代を除き、幼少期から現在までの生活は丸亀市が中心。そして、現在の市民活動も、丸亀市を主な活動拠点とされています。そんな紀伊さんが、丸亀市で初めて関わった団体「シャッターをあける会」は、前職での活動がきっかけだったと言います。

― 紀伊さん
前職では、小豆島の“要鉄だんじり実行委員会”の方々と一緒に活動していました。そのだんじり祭のポスターを張りに通町商店街に出向いた時に、丸亀市ですでに活動されていた「シャッターをあける会」に出会いました。当初は商店街の方々を中心に、空いた店舗の利活用を目的に活動されていたのですが、団体の方々と話をしている中で、団体に入らないか?と誘っていただきました。それがきっかけで、「シャッターをあける会」での活動を始めました。「シャッターをあける会」では、通町商店街を中心に、カマタマーレ讃岐を応援するパブリックビューイングや日本酒イベント、マルシェなどを開催しました。



カマタマーレ讃岐のパブリックビューイングの様子


「シャッターをあける会」以外にも、「まるがめ世話やき隊」という団体で活動されている紀伊さん。発足は2020年で、新型コロナウイルス感染症の影響によって市内の活気が薄れていく現状に対して、何かはじめなければと思ったことがきっかけだったそうです。

―紀伊さん
新型コロナウイルス感染症の拡大で特に飲食店の方々が厳しい状況に迫られ、丸亀自体の元気がなくなってきているように感じました。
丸亀に元気を取り戻したい、何か起こさなければならないと思い、「まるがめ世話やき隊」を立ち上げました。一番最初に始めた活動は「ドライブスルーでエール飯in丸亀」で、丸亀の飲食店さんが作るお弁当をドライブスルー形式で販売するイベントを開催しました。次に、丸亀の名物“骨付き鳥”を味わうことができる飲食店さんを集めたマップ「まるのみ」の制作、それから現在は、まちの清掃活動とイベントを掛け合わせた「ひろえば街が好きになる運動」を定期的に開催しています。地域のお店さんや、企業さん、それから行政さんなど、沢山の方々が賛同してくださったおかげで実現することができました。





今につながる過去の経験

丸亀で数々の取り組みをされてきた紀伊さん。まちの賑わいをつくる活動は、大学生の頃から続いているそうです。

― 紀伊さん
一度丸亀を出て、高知の情報系の大学に進学しました。大学で学んでいるにつれて、学校だけにとどまらず、社会につながることを学びたいと思うようになりました。だた、自分が何をしたいのか、当時はよくわかっていませんでした。
ある時、JTさんの活動「ひろえば街が好きになる運動」の広告を見て感動し、本社のお客様センターに電話をかけ、この活動を高知でも行えないか問い合わせをしました。そうしたら、高知の営業所の方と合う機会をいただき、話をするうちにより具体的になり、「学生団体ピース」というボランティア団体を立ち上げて清掃活動を行うようになりました。これがきっかけで、地域の方々と一緒に活動することへの楽しさを実感することができました。


学生時代の紀伊さん「ひろえば街が好きになる運動」の活動のヒトコマ


大学時代から現在まで、地域と関わりながら賑わいづくりに邁進されていますが、その強い想いには、ご自身の過去の体験がありました。

― 紀伊さん
幼いころに大病をわずらいました。大きな病気にかかった経験から、“生きる”ことへの意識がより強まったと思います。生きているなら、やりたいことをやろうと。そういった経験から、何かを残したいという想いが人一倍強いのかなと思います。


まずは、一歩を踏み出すこと

誰かに役立つことをしたい。その想いで地域の方々と一緒に賑わいづくりを続けられている紀伊さん。活動を継続的に続けられたのは、そこに対する想いと共感、そして、一歩踏み出す気持ちが大切だとお話されます。

― 紀伊さん
今までの活動の数々は、共感してくれる方々の支えによって実施することができました。何かを起こしたいと思ったときに、一人では難しいことも沢山あります。やりたいと思ったことに対して声を出し、共感してくれる方々と一緒に活動することで、より良い活動になると思います。また、いくら共感してくれてサポートしてくれる方がいても、自分が活動に対して燃えるような想いがないと、周りがついてきてくれません。やりたいと声を出した本人が想いを持って活動していることも大切だと思います。
そして、まずはやってみるという勢いが大切だと思います。色々な考え方があると思いますが、やってみないと分からないことは沢山あります。何もしないで動かないだけでは、地域は良くならない。結果的に出来上がることは、大なり小なり色々あって良いと思います。何かを起こすことが増えれば、街に賑わいが生まれると思うし、何かを成し遂げた経験が次のステップにつながると思います。

何かを始めてみるときに、起業という選択肢もありますが、社会的責任やリスクをより意識する必要があるので、動きにくくなるという側面もあります。市民活動では、プレイヤーがやりたいことを中心に議論し実践することができるので、地域で活動したいという想いがあれば行うことができます。何かの目的に向かって地域で活動したい、団体として活動したいときは、市民活動が適切だと思います。そして、市民活動で培ったノウハウが、本業にも生かされることがある。そうした橋渡しがとても楽しく、今の活動を続けています。だから、私にとって今がとても楽しいと思えています。



まちへの想い、そして、これから

最後に、丸亀で活動を続けられていることへの想いと、これからの目標を伺いました。

― 紀伊さん
丸亀で活動を続けている理由は、単純に言うと、自分が生まれ育った場所であり、一緒に活動してくれる人が丸亀に沢山いるからです。
今、幸いにも、良いメンバーが集まってきていると実感します。メンバーが増えることによって、自分では気づかないことを教えてくれる。そのおかげで、活動の幅が広がり、より良いものができると実感しています。

これからの目標は、自分がこのまちに住んでいて楽しいと思える、まちが好きになるようなきっかけづくりをこれからも行っていきたいと思います。
まちに住んでいて楽しいと思えることの一つに、人々が行き交うまちであることだと思っています。まちの中を人々が行き交い、お店に出向いたり、イベントに参加している風景があると、まちが賑わっていて楽しいと思えます。

「ひろえば街が好きになる運動」もその一環で始めました。商店街の方々とお話をする中で、コロナが落ち着いたころに丸亀の商店街を遊びにいらっしゃった方々を、キレイな状態でお出迎えしたいという想いがあることを知りました。キレイなまちに人々が行き交う風景をつくること、そして、まちの風景を改めて見直し自分なりのすきなまちの風景を発見してほしい。そういった思いを掛け合わせてこの取り組みを始めました。

また、個人的な想いではありますが、高知の文化を丸亀の方々にも体験していただきたいという想いもあります。高知には人が集まる場が沢山あり、学生時代はそうした場に出かけることが大好きでした。中でも、こたつを囲って宴会をする高知の文化がとても好きで、それを通町商店街で以前開催したことがありました。そうした外の文化を丸亀に持ち寄る事も、賑わいづくりにつながるのではないかと思っています。

新しく始める取り組みとしては、「コベントウ」という取り組みがあります。これは、地元の飲食店さんの食を詰めたワンコインで味わうことができるお弁当で、一つのお弁当で様々な飲食店さんの食を楽しむことができます。
また、以前制作した「まるのみ」を発展させて、「まるのみ」に掲載させていただいたお店さんを一同に集めたマルシェを開催できたらと思っています。



数多くの取り組みをされている紀伊さんが大切にしている先輩からの言葉「無理はしても、無茶はするな」。自分で限界を決めず、さらに一歩を踏み出すこと、まずはやってみることの大切さを教えていただきました。このまちで何か実現したいという想いがある方は、その規模は何であれ、まずはその一歩を踏み出してみませんか?

【Web掲載「新・夜型観光の促進へ…観光客向け飲食店ガイドマップを作成 「丸亀グルメのテイクアウト」を提案【香川】」(新しい)】