レポート

Report

丸亀市に住む子育て世代に寄り添う 特定非営利活動法人グランマール

「特定非営利活動法人グランマール」は、子どもの健全育成、子育てに関わる人への支援、地域社会の子育て環境の向上について寄与することを目的に創立されました。子育てに関わる人を対象に、相談支援をはじめとする子育て支援全般に関する業務を行い、相談員としての臨床心理士、公認心理師、大学教授、医師などの専門家と子育て支援員を含む運営事務局で構成されています。
子育てには、たくさんの喜びとともに不安や悩みが伴います。悩みがあっても、どこに相談すればいいかわからなかったり、相談の勇気がでなかったりと戸惑うことも多いのではないでしょうか。
同法人グランマールは、丸亀市子育て支援総合相談窓口・まる育サポート「あだぁじぉ」と、丸亀市発達障害児支援相談窓口「ほっぺ」というふたつの相談窓口で、丸亀市の子育て世代に寄り添っています。
今回は、同法人の大木祐治理事長と理事の髙木明美さんと大西治子さんにお話をうかがいました。



子育ての悩みに寄り添う

もともと、理事の髙木さんは、「NPO法人 地域は家族・コミュニケーション」を10数年前に立ち上げて、活動していました。当時は、「子育てサークル」と呼ばれる団体が生まれていたくらいの時期で、サークル活動からスタートしました。その頃は、子育てについての悩みや保護者自身が思っていることを話す相談事業は少ないと感じていたそうです。

―髙木さん
子育てを通して親自身成長していきます。親が、自分の気持ちをことばにでき、自分を大切にする時間や、日々の子育てを振り返り、気付きを積み重ねていく機会を持てないかと思っていたところ、臨床心理士の先生と出会いがありました。親同士の支え合いにプラスアルファで専門家のコーディネート、心理学が加わった、保護者支援の活動を主にしていました。
その中で、発達障害を持つお子さんのお母さんからの相談がいくつかあり、もう一つ別に、発達障害支援の相談の場であったり、手厚い支援が必要ではないかと感じました。その頃、丸亀市で「提案型公募型協働事業」があり、発達障害児支援事業で公募に参加し、半年間事業を行うことができました。その後は自主活動として実施し、それから5年後に正式に委託事業として認定されました。
「専門相談員と話ができる」ということが口コミで広がり、ある時期から、発達障害児以外の相談が増え始めました。事業内容とのズレを感じていたとき、丸亀市が「利用者支援事業」という国の事業を行うこととなり、ワンストップの子育て支援総合窓口として利用者の利益を考えた特色も持たせたいということで相談員の先生方に声が掛かり、丸亀市と検討を始めました。現状から見えてきた利用者のニーズにも応えることが出来る窓口になると感じました。

―大木さん
専門相談員と保育所長を経験した人などで構成した特定非営利活動法人グランマールで、平成28年10月末から丸亀市子育て支援総合相談窓口をスタートさせました。
「特定非営利活動法人グランマール」と「特定非営利活動法人地域は家族・コミュニケーション」は、それぞれが事業を受けて、相談窓口を設けていましたが、専門相談員が共通ということもあり、昨年度から合併し、一つのNPOにしました。名前はグランマールを継続させました。




NPOと市、関係機関がチームに ~ワンストップと専門性~


子育ては、たくさんの喜びを感じますが、同時に戸惑いや不安を感じることもあるでしょう。気になることがあっても、どこに相談すればいいのかわからなかったり、相談する勇気がでなかったりして、様子を見ているということもあるかもしれません。「特定非営利活動法人グランマール」は、丸亀市子育て支援総合相談窓口「あだぁじぉ」と丸亀市発達障害児支援相談窓口「ほっぺ」、二つの相談窓口で幅広い悩みをカバーします。

―髙木さん
2つの窓口には、16名の相談員がいます。臨床心理士、医師、大学教授、児童相談所所長の経験がある方、元家庭裁判所調査官、元教員・元保育所長など、さまざまな分野の方がいます。
そして、丸亀市では、「まる育サポート」という体制があります。
妊娠期から子どもが18歳までの子育て期を、健康課の「ハッピーサポート丸亀」(利用者支援事業母子保健型)とNPO法人グランマールの「あだぁじぉ」(利用者支援事業基本型)が連携をとりながら支援するという取組です。NPOと市が連携することで、必要な支援を必要な人に届けられる仕組みができています。

―大木さん   
健康課の、妊娠から就学前までの子育て期を支援する「ハッピーサポート丸亀」と「あだぁじぉ」がリンクすることで妊娠期から18歳まで、切れ目のない支援を行うということが目的です。
保護者の悩みに対しての相談に加えて、情報提供や必要な機関へ繋ぐことも、保護者の方と相談し、了承の上で関係機関と連携することもできます。
その後の継続相談も行うことができる受け皿としての役割もあります。窓口の充実のため、市の関係各課等と年3回ほど協議会等を開催しています。

―髙木さん
保護者の方の状況の把握や背景、必要な機関につなぐための判断は、とても大事であり、専門的な視点が必要と考えています。どこに行ったらいいかをききたいという情報は、それに応えるネットや紙面で手にすることが出来ます。また、家族や保育所や学校、地域の子育て支援の場等、親子を支える様々な場もあります。そうしたことの上で、相談をしたいと思い窓口に来られるのではと思います。そのための時間を作り、連絡をして来られた方の相談に対して、窓口では、「相談者のニーズが何か」を大事にし、専門の相談員との相談に安心して繋がれるようにと思っています。  

「あだぁじぉ」の利用者支援事業は国の事業です。丸亀市では、保護者の時間や手間を少なくし、来られた時に、ワンストップで対応できる専門性のある窓口という特色をプラスさせました。発達障害児の事業は丸亀市の独自事業です。この二つの事業は丸亀市の方針、方向性のあらわれだと思います。それがNPOの理念とも合致し、今があります。二事業を運営していくことで、双方ともにパワーアップしたのではとも思っています。



新しい取組

コロナ禍は、私たちの暮らしに大きな変化をもたらしました。来所相談が多かった「あだぁじぉ」と「ほっぺ」も、来所での相談ができなくなるという影響を受けました。そんな中でも、子育てには、悩みや不安はあります。グランマールでは、時代の変化に合わせて、電話やZoomを使った相談をいち早く取り入れました。専門員の常駐など、新たな取組もスタートさせました。二か月に一度、休日相談も、お仕事をしている保護者のニーズに対応することとして取り入れています。

―大木さん
去年は「あだぁじぉ」だけで1000件以上の相談を受けました。
昨年度から、専門相談員が窓口に半日常駐することになり、専門相談員への相談がよりしやすくなりました。今までは、「あだぁじぉ」で受けた相談を、専門相談員と相談者の予定を合わせて繋げるという流れでしたが、常駐日が決まっていることで予定を決めやすくなり、出来るだけ早い日程で専門相談員との相談を入れることが出来るようになりました。                                         

―髙木さん
私たちの活動、相談は、コロナ禍だから閉めるというものではありません。これまでのカタチではありませんが、Zoomや電話やメールを工夫して取り入れながら、利用者に合わせて相談を受けています。コロナ禍前は、来所してもらい顔を合わせて相談することが一番いいと思っていましたが、仕事を持っている方や出かけて来るのがしんどい方等「電話相談の方がしやすい」という声も聞き、新たな気付きになりましたね。これからコロナが終わっても、相談者の相談しやすい方法で受けるということは継続したいです。選択肢の幅が広がりました。



悩みを気軽に、話せる場所

子育てに関する悩みや不安の中には、気軽に誰かに話しにくいことやすぐに行動できないこともあると思います。「その悩みは、一つのスタート地点。気軽に相談してほしい」と二人は話します。

―髙木さん
相談に来る方の中には、悩みがあることや、相談することについて抵抗感がある方もいるかもしれません。でも、人に協力を求めるという事は、自立した大人の選択肢の一つであると私たちは思っています。「あだぁじぉ」をその一つの選択肢として活用してほしいです。私たちは、受付として電話を受けながら、保護者の方の踏み出した勇気や気付きを大切に、この電話が大事な機会になればと思いながら対応しています。まずは気楽に連絡してほしいです。

―大西さん
コロナ禍前の対面相談では、相談に来たときの保護者の顔と、帰るときの顔がぐっと違って見えることをよく感じていました。初めの相談では話を聞くだけなので、状況はまだ変わっていないのですが、相談が終わるころには、表情が変わっているんですね。
丸亀市は、各所で親子が支えられています。ここは、その一角です。相談することで、次に繋げることができるので、いろいろな支えがあることを知ってほしいです。

―大木さん
相談窓口以外にも、さまざまな事業で子育て世代を支援しています。あだぁじぉでは、出張相談や保育所現場等に出向いて行っての講座の開催、子育て支援センター等への研修会等も行っています。また項目別の子育て支援情報冊子を9冊作成しています。
                         
発達障害児を教育現場で直接支援する対象となったのが15年くらい前で、それ以前は支援の対象外でした。約15年前に「特別支援教育」が実施されはじめ、教育現場でサポートしましょうということがある意味義務付けられました。そこで、それ以来、教育現場の先生たちを対象に、講演会を開催しています。コロナ禍前は、交流会を開催し、ざっくばらんに話し合える場所も設けていました。
「巡回カウンセリング」では、専門相談員が保育所や学校などの教育現場に出向き、先生の相談を受けます。保護者の集まりに専門相談員が入っての相談会や、発達に不安のある親子の場を設け、子どもへの関わり等、専門相談員が相談を受けたり、子どもとスタッフが一対一で関わっています。ほっぺでは発達障害の関係の本が600冊くらいあり、貸出することもできます。コロナ禍で来所が難しくなっている関係で、本の貸出は減っていますが、情報を得ることができますよ。
どちらの事業もホームページがありますので、見ていただけたらと思います。通信やコラム、動画を見ることもできます。




今後の目標

―大木さん
「あだぁじぉ」の方は、急激に相談件数が増えてきたので、今後どうしていくかは一つの課題であると考えます。
地域の子育て支援センター等に相談員が出向いて、保護者とお話をしたり、相談を受けたりする出張相談や研修をさらに充実させていければという思いもあります。
コロナが収まり、従来の形で事業を安心して実施し、安心して参加出来るようになるのが一番ですが、その間は、工夫をしながら、補えるようにしていきたいと思っています。

―髙木さん
これまでも、少しずつ、ニーズに合わせ、市と協議しながら今の形にしてきました。
今思うのは、18歳以上の支援は、「子育て支援」の枠組みから外れてしまうことが気になっています。現状として個別相談という形は難しいですが、発達障害児に関しては、18歳以上の青年期の保護者のグループ相談などは回数が少なくても継続をしていければと思っています。



【編集部より】子育てのことを何でも相談できる。話しにくいことも、少し勇気を出して相談することで、新たな扉が開く。そんな場所があるというだけで心強く感じました。今、悩みがある方も、一歩を踏み出してみませんか?

【まる育サポート あだぁじぉ(新しいウインドウが開きます)】
【丸亀市発達障害児支援相談窓口 ほっぺ(新しいウインドウが開きます)】