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パソコンがあれば、なんでもできる!好きなことを突き詰めよう 特定非営利活動法人 丸亀創生塾新明倫館

「特定非営利活動法人 丸亀創生塾 新明倫館」は、丸亀市において、創業、社会イノベーション、創造的改革の熱意を持った人材発掘、地方創生に寄与すること、そしてまちづくりの推進や観光の振興を図り、企業・公務では着手しづらい細かな活動を通して地方創生を成りうる要(かなめ)を築き上げることを目標に掲げています。
現在は、丸亀市内の小学校のICT支援や子ども向けプログラミングイベントの開催など多方面で活動を続けています。今回は、同法人の教室「プログラミング教室ワンダフォー」にて、檜原優希副理事長にお話を伺いました。



今までの活動

「特定非営利活動法人 丸亀創生塾 新明倫館」は、2016年の立ち上げから、さまざまな活動を経て、現在の活動につながっています。

―檜原さん
2016年、「特定非営利活動法人 丸亀創生塾 新明倫館」は立ち上げられました。
当初は、丸亀の起業者や法人を立ち上げたいという方向けに、東京大学や早稲田大学などの有名大学の教授を招き、「起業塾」をしていましたが、4年目に少し方向転換をして、ヨガや生け花など、カルチャースクールを行っていました。
一昨年、私がここに入社して、それからはパソコンをメインとする教室となりました。最初は、おとな向けに、パソコンやスマホの教室をマンツーマンの対面式で、昨年4月からは子ども向けのプログラミング教室を始めました。
令和4年度からスタートする予定だった「GIGAスクール構想(※)」は、子どもに一人一台タブレット端末を配り、それを使って学習しましょうという取組です。私は、丸亀市の教育委員会さんからお話いただき、「ICT支援員」として、丸亀市の小学校15校、約6300台の端末管理や実際に学校の授業に出て使い方の説明をしています。
その延長線で、夕方の時間を使い、子どもたちにもっと深くICTについて知ってほしいと思い、「ワンダフォー」を開放しています。プログラミングやデジタルイラスト、動画制作などができるよう、ここにあるものは何でも触れてもらえるように準備しています。
パソコンのことだけではなく、コミュニケーションの場として利用してもらえればとも思っています。また、普段あまり見ない道具なども置いてあるので、それを知識の足しにしてもらってもいいかな、とも思っています。実は、私は家庭教師の経験もあるので、少しですが、受験対策として勉強を見ることもあります。

(※)児童・生徒に一人一台の端末と高速ネットワーク設備対応、教育のICT化を進める国の取組。

幅が広いですね。檜原さんはもともとどんな仕事をされていたんですか?

―檜原さん
地元のさぬき市で、修理業を営んでいました。ジャンク品を購入してきて、直して売るという仕事です。その頃、丸亀市にある電気屋さんから「パソコンの配達を手伝ってくれないか」と声を掛けてもらい、その仕事を通じて、新明倫館を知りました。仕事をしていく中で、方々から「パソコンのことをもっと聞きたい」と声をいただいており、「パソコンなどについて気軽に相談できる場所を設けたらニーズがあるのかも」ということを理事長に相談したら、「それならこの場所を使ったらいいよ」と言ってくれて、一昨年、丸亀市に引っ越してきました。仕事からの出会いがつながって、ここに来ました。



丸亀市のICTは

「GIGAスクール構想」は丸亀市ではどのような状況ですか?

―檜原さん
「GIGAスクール構想」は、もともとの計画では、今年度(令和4年度から)スタート予定の政府の施策でした。しかし、コロナ禍により、一年前倒しで始まることになり、現場の状況がまとまっていないと感じます。
そんな中、2・3月には、卒業式や発表会をYouTubeで配信するお手伝いをしました。これはコロナ禍という理由だけでなく、遠方のおじいちゃん・おばあちゃんや親せきの方にお子さんの晴れ姿を見てもらうこともできますよね。今後は、そういう依頼が増えてくるのかなと思います。

一人一台端末を持って学ぶということですが、子どもたちはどう感じているのでしょうか?

―檜原さん
今配布されているのは、「Chromebook」という端末です。それを使い、「クラスルーム」という機能で生徒に宿題を配ったり、「ジャムボード」を使い、意見を出し合ってまとめたり、「グーグルスライド」を使い、調べもの学習の発表をしたり…。特別授業ではなくて、国語や算数などの授業で普通に利用しています。また、休み時間も使っていいよという学校もあります。丸亀市の教育委員会では、4月から端末の持ち帰りができるように検討しているそうで、それが承認されれば、子どもたちは学校から家に端末を持ち帰り、オンライン授業が行われるということも実現するかもしれません。
また、大人数だとコロナが心配という児童が、隣の教室からオンラインで授業を受けることで、積極的に発表することができたり、ほかの児童と交流が図れたりしたという事例がありました。不登校や学校に行きにくいと感じている子も、こういった方法を使えば、授業に参加できるということもあるかもしれません。
現場で見ていると、子どもたちは、自分の好きなものに対しての熱意が強く、多感で率先的だなと感じます。実際、私よりもよく知っているなと思う子もいますし、教えることがないくらいイラストがうまい子もいます。でも、インターネットを使っている以上、犯罪に巻き込まれる可能性もあるということを学んでほしいなと思います。

子どもたちに教えるにあたり、気を付けていることはありますか。

―檜原さん
怒らないことです。家庭教師の経験から、怒っても叱ってもプラスにならないと感じていました。それなら怒ることで苦手を克服するのではなく、褒めて伸ばしてあげたいと思っています。
あとは、失敗も何かの経験だと思います。私もたくさん失敗しましたが、「こういうところにプラスになったな」と思うことがたくさんありました。ですので、チャレンジすることを念頭において、何でも取り組んでほしいと思います。



ほかの活動者とのコラボ

檜原さんは、マルタス主催の市民活動者向けのイベントにも毎回参加し、多くの方との交流を図られています。その中から生まれたのが、「特定非営利活動法人未来ISSEY」さんとコラボした市民活動です。

―檜原さん
マルタスで開催された交流会がきっかけで、「特定非営利活動法人未来ISSEY」さんが、入院している子どもたちに向けてしている活動を知りました。そこで、私たちの活動内容を伝え、プログラミングやデジタルイラストを描ける道具を病院にもっていき、私が話しながら体験してもらうという企画が実現しました。初めは緊張している様子の子どもたちも、プログラミングでゲームを作ったり、イラストを描いてみたりすることで、だんだんと打ち解けてたくさんの話を聞かせてくれました。定期的に開催したいと思うのですが、コロナ禍で機会を設けることが難しくなっています。それでもできることはやっていきたいと思いますね。

ほかの活動者さんと交流で感じることはありますか。

―檜原さん
皆さんとの交流は、本当に「ありがたい」の一言です。私は、丸亀に住み始めてまだ3年目くらいで、丸亀市の中のコミュニティや人とのつながりがあまりありませんでした。でも、マルタスの交流会を通して、さまざまな方とお話しできる機会がたくさんありました。その中で、次の活動や仕事につながり、自分では気づかないアドバイスをいただくこともあります。今後も、交流会などにはどんどん参加したいと思っています。



パソコンがあれば、なんでもできる

活動場所である、「プログラミング教室ワンダフォー」は、通町商店街の入口、丸亀城を望むことができる2階にあります。こちらは、現在、水曜日と日曜日は無料で開放されていて、電話での予約で利用することができます。子どもから大人まで、誰でも利用できるこの場所で、「パソコンがあれば、なんでもできるんです」と檜原さんは熱く話します。

―檜原さん
今は、水曜日と日曜日だけですが、資金の工面などができたら、ゆくゆくは、全日解放できたらといいなと考えています。対象年齢も厳密には設けておらず、「パソコンの使い方を知りたいな」、「スマホの使い方がわからない」など、ご年配の方が来ることもあるので、パソコンなどにまつわることならなんでも聞いてくださいという窓口にしたいですね。プラスアルファを聞ける場所が少ないので、そういう時に使ってもらえれば嬉しいです。
パソコンがあれば何でもできます。そのことをもっと広めていきたいです。プログラミングだけでなく、サイトの作り方、それ以前のパソコンの使い方など、ここやマルタスで広くイベントなどを開催し周知していきたいです。マルタスでは、そういったイベントを既にしている団体さんもいるので、そちらとコラボなどもできればいいなと思います。
私自身、機械が得意ではなかったのですが、中学生のときにプログラミング部に入部したことがきっかけでパソコンにはまりました。ゲームを作ることも楽しかったですし、プログラミングでは英語や数学も使うので、「これは学校の勉強にも活かせるな」と気付きもありました。そうして私自身、今、好きなことを仕事にして生活を送っています。
今の子どもたちは、インターネットやYouTubeなどで、さまざまな人のいろいろな生き方を見ることができます。「好きなことや得意なことを伸ばしていけば自分のしたいことができるよ」、「夢は叶えることできるのかも」ということを伝えていきたいですね。
今、ここに来ている子の中にも、学校に行きにくい子がいます。未来ISSYさんとのコラボで、長期入院している子がいることも知りました。でも、学校でなくても、パソコンを使って学ぶことができます。それを活かして、学習能力の差を底上げしていきたいという気持ちもあります。インターネットさえあれば、どんな体験でも何でも見たり聞いたりできます。この機会を使ってたくさんのこと学んでほしいですし、どんな生き方でもできると伝えたいですね。




マルタスでのイベントの様子


今後の目標

―檜原さん
私は、活動を始めてとにかく日が浅く、子どもに関しては、やっと2年目という状況です。どんどん活動の幅を広げていくところが課題かなと思っています。
今後は、丸亀市だけに留める必要はないのかなとも思います。私たちは、インターネットさえあれば、全国どこにでもつながることができます。他県のNPOや世界の団体とつながり、子どもの支援している人たちのお手伝いがしたいと思います。
学校の勉強も大事ですが、自分の好きなことを突き詰めていくことがこれからの時代、すごく大事なことだと思うので、私たちは、その突き詰められる環境を提供し、好きなことを伸ばす場所として使ってもらえたら嬉しいですね。



【編集部より】とても前向きで、ワクワクするようなお話を聞くことができました。「特定非営利活動法人 丸亀創生塾新明倫館」さんは、マルタスでもイベントを開催しています。気になる方はぜひ、ご参加ください。

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