すべての子どもたちに大きな夢を。 認定NPO法人さぬきっずコムシアター
| まちのヒト・コト
丸亀市土器川沿いの大きな古民家を拠点に、さまざまな場所で子どもたちや子育て世代のために活動を行う「認定NPO法人さぬきっずコムシアター」。
1983年、“すべての子どもたちにたくましく豊かな創造性を!”というスローガンのもと「丸亀子ども劇場」として発足し、子どもたちに舞台芸術の鑑賞体験など創造性豊かな体験を通して子どもたちの健やかな成長を願い活動をしていました。その軌跡を大切にしながら、2005年「NPO法人さぬきっずコムシアター」として新たなスタートを切り、2020年、より高い公益性を持った団体として、「認定NPO法人さぬきっずコムシアター」と香川県に認定され、さらに活動の場を広げています。
同法人で理事長を務める髙橋勝子さんに、今までとこれからの活動について伺いました。
「丸亀子ども劇場」から「NPO法人 さぬきっずコムシアター」へ
髙橋さんは広島県福山市出身で、結婚を機に丸亀市に移り住み、誰も知り合いがいない土地で孤独な子育てを経験されました。そんな中で、お子さんを通じ知り合いができ、そこで出会ったのが「丸亀子ども劇場」。お子さんに芸術体験をさせたいと思い、会員として参加したことが現在の活動につながるきっかけとなりました。
「『丸亀子ども劇場』は、子どもとおとなに舞台芸術の鑑賞の場を作るために、会費制で活動を行っていました。舞台を鑑賞することは、子どもたちが喜怒哀楽を疑似体験し、そういう思いを共感して人の気持ちを受け止め、感性を育んでいきます。丸亀子ども劇場の運営委員長として活動していく中で、『舞台芸術体験の場を作る』ことが団体の目的になってしまっていることに気が付きました。舞台を観ることは、子どもたちの育ちに必要な一つの体験であって、私たちが望むのは子どもの育ち、『生きる力』を育むことなんだと原点に立ち返りました。そこで、社会的な視点を持ち、子どもたちの育みの活動に取り組む団体として法人化しようと役員で話し合い、『さぬきっずコムシアター』と名称も変え、新たなスタートを切りました。この『さぬきっず』には、『さぬきの子ども』という意味だけでなく、地域の、讃岐の、モノ、ヒト…と、幅広い意味が込められています。鑑賞体験や創造体験だけでなく、2012年に今の拠点である土器川沿いの古民家に移転したことで、『みんなの居場所』として活動の幅を広げてきました。ずっと田舎のおばあちゃんの家のようなほっとできる古民家を探し続けて、さまざまなご縁でこの家に出会えることができました。当初は、床や天井に穴も開いた悲惨な状態でしたが、子どもたちのための活動をするなら…と、大家さんのご厚意で改修していただき活用できるようになりました。また、約4年前にコミュニティカフェとしての『コムカフェ』を始めたとき、スタッフで壁を塗るなどのDIYにもチャレンジしましたし、子育て家庭の皆さんや地域の方々と物置だった納屋もリノベーションしフリースペース『な~や』に変身させました。大きな古民家で庭も広く、本当に素敵な拠点になっています」
そして認定NPO法人へ
「NPO法人」とは、特定の公益的・非営利活動を行う法人のこと。さらに、「認定NPO法人」は、より客観的な基準において高い公益性を持っていることを判定された法人のことをさします。「認定NPO法人さぬきっずコムシアター」は、2020年7月、丸亀市第1号の認定NPO法人として香川県に認定されました。活動は、舞台鑑賞はもちろん、乳幼児と親子の集いの場である「コムコムひろば」、小学生を対象とした「どっきん☆くらぶ」のほか、さまざまな年代や立場の居場所作りや、多世代が集いふれあうイベント、野山でのワークショップや絵画教室などを行う体験事業などさまざまな場面に広がっています。
「現場を第一に考えながらの認定NPO法人への申請はとにかく大変だったので、認定されたときは本当に嬉しかったです。そして、外に向けて応援を募れることが一番変わりましたね。会員さんにも『認定NPO法人』の一員という思いを共にもって関わっていただけたらと思います」
一緒に活動するメンバーが宝
認定NPO法人さぬきっずコムシアターさんでは、現在約30名のスタッフが活躍されています。
「実は今一緒に働いている『コムコムひろば』のスタッフは、もともとはコムコムひろばの利用者だった方が多いです。この場所をお子さんと利用したお母さんが、『自分がここですごく楽しく子育てができたから私もここに関わりたい』と言ってスタッフになってくれて、素晴らしいメンバーが集まっています。子どもたちが楽器などを演奏して活動する「きっずコム バンド」は、スタッフからの提案でスタートした活動なんです。メンバー発信でやりたいと声が上がるのはとても嬉しいことですね。私は、みんなに支えてもらって本当に感謝しています。スタッフのみんなが私の宝です!」
新たな挑戦
長い間、子育て家庭に寄り添い、地元に根付いたさまざまな活動を行っている認定NPO法人さぬきっずコムシアターさんですが、今年度から「さぬきっずまなび家プロジェクト」を新たにスタートさせました。このプロジェクトは、休眠預金を活用した公益事業として、コロナ禍において生活が厳しい状況にある子育て家庭や、ひとり親家庭への応援として、小中学生を対象とした学習支援や0歳から18歳のお子さんがいる子育て世代を対象に食品・生活用品の配布などを行っています。
「コロナ禍で子育て家庭も大変な状況下にあり、本当に困難なご家庭の応援ができないかとずっと思いを巡らせて『どうしてもやりたい』と理事を説得し、助成金も受けることができ実現しました。学習支援は現在(取材日:6月5日)12名の登録で、勉強したり遊んだり楽しい時間を過ごしています。元教員の方や学生などが関わり、子どもたちにとても熱心に対応してくれています。また、飲食業界の方のご協力で、学習支援の場で子どもたちに夕食の提供もできるようになりました。経済的支援として、食品・生活用品の配布をすることで、困りごとや不安ごとの聴き取りの機会にもなっています。この活動を通して、企業やさまざまな方から配布用品の提供をしていただくこともあり、新たなつながりもできてきています。こうやって新しいことを始めたとき、人が集まってくださり、協力してくださる方がいることが本当にありがたく幸せなことだと受け止めています。
今後の課題は、今まで支援の手が届かなかった子どもたちへの支援をどう継続し展開していくか、ということです。団体としての財源も体力も今以上に必要になってきます。みんなで考え取り組んでいきたいと思います」
いつでも帰って来られる場所に
たくさんの子育て世代と子どもたちのために地域に密着し、活動を続けてきた認定NPO法人さぬきっずコムシアターの皆さん。髙橋さんは、子どもたちの成長がみられることが嬉しいと笑顔で話します。
「活動を通して、赤ちゃんの頃からの子どもたちの成長をずっと見ていられるんです。ふとした時に、成長した子どもたちが会いに来てくれることがとても嬉しいですね。つながりが一番大切。いつでも帰って来られる場所になっているのかなと思います」
すべての子どもたちに大きな夢を
「さまざまな家庭がコロナ禍による影響を受けていると思います。ステイホームが呼びかけられ、ただでさえ孤立しやすい子育て家庭が、外に出にくいことで人との関わりも減り、さらに不安やストレスが溜まりやすい状況になっています。少しでも外に出て人と関わることは大事です。悩みを一人で抱え込まないで、私たちに相談してほしいと思います。すぐに解決には繋がらないかもしれませんが、話すことで楽になることもありますし、次の支援につなげることもできるかもしれません。さぬきっずでは、スタッフが一人ひとりに寄り添い対応しています。出かけにくい方にはオンラインでの交流や講座、相談なども実施しているので、ぜひ活用して欲しいです。同じ子育て家庭と繋がることも楽しみの一つになります。また、中高生の居場所『テラ☆ティーンズ』や子どもからおとなの相談窓口『トゥインクル』など、さまざまな取組もしていますので、悩みがあったり、不安を持ったりしている子どもたちにもさぬきっずを利用してほしいなと思います。
子どもたちには、いろいろなことを体験し、楽しいことも辛いこともいっぱい重ねて、たくましく育ってほしいと願います。そして夢や希望をを持ってほしいですし、持てる社会を私たちおとなが創っていかなくてはと思います」
【編集部より】子どもたちと子育て世代のため、第一線で活動を続けてきた「認定NPO法人さぬきっずコムシアター」。さまざまな活動を通し、参加した子どもたちが夢を持つきっかけにもなっているのだと思いました。また、スタッフの皆さんが持つたくさんの想いは、これからも未来へ受け継がれていくと思います。貴重なお話をありがとうございました。
【認定NPO法人さぬきっずコムシアター】https://sanukids.org/