レポート

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絵本作家サトシンさん 絵本よみまショー&サイン会 2022.8.28(日)

8月28日(日)、絵本作家サトシンさんによる「絵本よみまショー&サイン会」が開催されました。
サトシンさんは新潟県出身で、広告制作プロダクション勤務、専業主夫、フリーのコピーライターを経て、絵本作家として活躍されています。絵本の主な作品に、第1回リブロ絵本大賞や第5回書店員が選ぶ絵本大賞を受賞した「うんこ!」(西村敏雄・絵/文溪堂)や、「わたしはあかねこ」(西村敏雄・絵/文溪堂)、「とこやにいったライオン」(おくはらゆめ・絵/教育画劇)などを持ちます。
今回のイベントは、サトシンさんによる絵本の読み聞かせと、その絵本に関する思いや裏話も話しながら進められました。たくさんお話された中から、いくつか紹介します。



『ながいでしょ りっぱでしょ』(山村浩二・絵/PHP研究所)
たくさんの動物が出てくるこちらの絵本は、子どもたちに何の動物が登場するか問いかけながら読まれました。
子どもたちは、絵をヒントにしながら「ぞうさん!」「きりん!」などと元気に答えていきました。

―サトシンさん
この絵本は、動物たちの長さ比べで、『それぞれにいいところがあると伝えたい』という思いからできました。子どもたちにとって一番身近な大人は、お父さん・お母さんで、子どもから見ると体も大きいし経験も豊富ですよね。そういう人に褒められると子どもたちも嬉しいし、『パパやママは私のことが好きだ』と感じることができます。それが自分を好きになるきっかけになり、自分のことが好きだからこそ、相手のことも好きになることができます。子どもたちは、社会ルールを覚えたり勉強をしたり、やることが多いですが、まずは自分のことを好きになることが大事だと思います。



『ま、いっか!』(ドーリー・絵/えほんの杜)
サトシンさんの座右の銘であるという「ま、いっか!」という言葉。これを絵本にしたそうです。

―サトシンさん
私は、この言葉があったからこそ絵本作家になれたと思います。一生懸命なにかをすることは大事ですが、疲れてしまいますよね。絵本業界には、すごい人がたくさんいて、すごい作品がたくさんあります。そんな中、私なんかができるのかな・・・と悩む時期もありました。そういうとき、『ま、いっか!』という言葉で、肩の力が抜けました。すごい人はすごい人、でも私にしかできないこともあると思えて、心の余裕ができました。



『わたしはあかねこ』(西村敏雄・絵/文溪堂)
サトシンさんの代表作の一つである『わたしはあかねこ』(西村敏雄・絵/文溪堂)は、マルタススタッフとの掛け合いで披露されました。子どもたちは真剣な表情で、スクリーンを見つめていました。この本は、サトシンさんの子どもの頃を100%投影した内容になっているそうです。

―サトシンさん
私は、子どものころからしゃべってばかりの子どもでした。面白いことを思い付くと、頭の中にお話の世界が広がり、映像付きで投影されるんです。授業中でもお話が思いつくと上の空で、毎日、先生にも親にも怒られてばかりいました。いやになることもありましたが、あるときに私は、『面白いことを想像しながら楽しむことは、誰にでもできることではない』と気付き、自分が思い付いた話を友だちに話すことで人気者になりました。そして、気が付いたら絵本作家になり、今日のようにみんなの前で話すことができるようになりました。
大人たちに『だめだ』と言われていたことが、今では私の一番の武器になっています。怒られてばかりでしたが、子どものころの僕は、よく自分のことを好きでいてくれたなと思います。そこから考えたのがこの絵本です。



『あかちゃんがきた!』(松本春野・絵/アリス館)
このお話は、子どもたちよりも保護者の方が引き込まれていました。

―サトシンさん
以前、たくさんのお母さんたちに、産気づいて赤ちゃんが生まれるまで何を考えたかをインタビューして絵本を作りました。それから、「2人目が生まれたときに上の子が何を思うか」を書いてほしいということを言われることが多くなり、「新しい家族が来た日に何を考えるか」ということを、自分の宿題として考えました。
そして、真っ先に思ったのが上の子の赤ちゃん返りについてでした。赤ちゃん返りした子どもたちは、まだ自分の心をコントロールできません。そんな子どもの気持ちを考えながら、でも、ネガティブな要素は一切なしで、新しい家族がやってきて赤ちゃんがいる生活って楽しい、わくわくするよねということを書きました。



『かけだしたイス』(ドーリー・絵/主婦の友社)
おとなになってからの自分を投影したという物語。わくわくするお話に子どもたちも釘付けでした。

―サトシンさん
主人公はイス。イスって、足がありますが、走ったり歩いたりすることはできません。そんなイスでも動きたい気持ちがあるんじゃないかと考え、私が絵本をやろうと一歩踏み出した気持ちを表しました。
私は、いろいろな小学校や園に行く機会がありますが、その中で気になるのが、子どもたちの口癖が「無理」ということです。「始める前から無理ってどういうことだ?!」とモヤモヤします。
「新しいことにチャレンジして失敗したら、みっともないし恥ずかしいから、そんな思いをするくらいなら何にもしない方がまし」「何かにチャレンジする人を、斜に構えながら笑っている方が気持ち的に楽」などと言って、一歩が進めない。それってだめだと思います。何事も動かないと始まらないですよね。あと、一歩を踏み出さずにいられないときがあるんです。そういうときに、「無理」なんて言わず、背中を押せるような物語にしたいと思いました。それを伝えたくて、思いを込めたて書いたのがこの絵本です。
実は、続編を考えています・・・。机ではない、別のものが動く予定です。



最後は、サトシンさんの絵本をもとに作られた曲に合わせて、歌も披露されました。楽しいリズムに、子どもたちも手拍子などで応えました。
また、読み聞かせのあとにはサイン会も行われ、参加者は、サトシンさんとお話をしたり、質問を投げかけたりと楽しい触れ合いの時間を過ごしました。

参加した保護者からは、「絵本で、小さいときのワクワク感を思い出せた。子どもにも伝われば嬉しい」と話しました。




【編集部より】絵本の読み聞かせだけではなく、サトシンさんが絵本に込めた思いを聞くことのできる貴重な機会となりました。サトシンさんの絵本は、マルタスにも所蔵しています。親子でお話を楽しみませんか?