庭には二羽にわとりはいない、伝えたい庭のコトはある 2022.7.24(日)
| イベントレポート
7月24日(日)、トークイベント「庭には二羽にわとりはいない、伝えたい庭のコトはある」が開催されました。
中津万象園は丸亀市の代表的な観光地の一つです。 お馴染みの場所が今大きな課題に直面していることを皆さんは知っていますか? 中津万象園を支えるお庭さん(庭師の愛称)をはじめ、様々な視点から丸亀市の大切な文化財を守るために知ってほしいことがあります。美しい大名庭園の知られざるお話を語りました。
庭を守る人
―自己紹介をお願いいたします。
ー公益財団法人中津万象園保勝会評議員 真鍋有紀子さん
日頃は富士建設株式会社で代表をしております。中津万象園は1998年から事務局で働いていました。2006年にメセナアワードを受賞しましたが、その時に中津万象園について、庭の歴史やここでお殿様が何をやっていたのか全然知りませんでした。そこから自分で調べるようになり、情報発信もするようになって、現在に至ります。
ーお庭さん 堀口剛宏さん
入社して24年目で、仕事内容としては庭の管理で、剪定や予防など、一年を通して行っています。
ーお庭さん 渡邉武司さん
2005年に入社しました。仕事内容としては庭園の管理、松の剪定、今の時期ですと虫の予防などをしています。
庭の管理
―日々管理されている中で、一番の悩みは何ですか?
ー堀口さん
天候によって、予防や剪定の時期が変わってくることです。去年と同じかなと思ったら、虫に食われていたりするので、苦労があります。
ー渡邊さん
木の特長はいろいろありますが、私が中津万象園に入ってからよく思うのが、もう少し水がきれいであればどれほどいいだろうかということです。池のきれいな庭園は涼しさを感じますが、中津万象園は濁っているので、そのあたりが何とかなればいいのにとは思います。
―池の水が濁る原因は?
ー渡邊さん
松などの葉っぱが池に落ちて底に溜まり、ヘドロができるのが原因として考えられます。長靴を履いて池の中を歩いてみたら膝まで埋まるようなときもあり、井戸水を入れてはいるのですが、汚れの方が強いですね。
ー堀口さん
水を入れるところと、排水の距離が近すぎて水の流れができないので、流れが作ることができればもっときれいになるのかなとは思っています。
大名庭園の使い道
大名庭園とは、江戸幕府政権下の江戸時代に、各藩の大名が江戸や地元で築造した庭園です。
―丸亀市の今の観光資源の一つになっていると思うのですが、真鍋さんが思う、大名庭園を守る意味とは?
ー真鍋さん
日本には50ほど大名庭園があるのですが、この20年で2つ無くなっています。今回このイベントをするにあたり、色々な人と「中津万象園を残す意味があるか」という話し合いをしました。しかし、それに対して、「ない」という回答が多かったことにショックを受けました。庭ってものすごい面積がありますし、とても維持費用がかかります。どうしても使い道が使う人と相対する関係になり、その関係が成り立たなくなってしまったときにお庭っていらないものになってしまうのです。
「いらない」という選択も当然あると思うのですが、訪れてくれる人が庭園を使いこなしていくのも、面白いんじゃない?と思っています。
―今までで、こんな使い方あるんだ!というような使い方はありますか?
ー真鍋さん
コスプレです。お茶席やお庭にとても喜んでいただきました。また、外国人のインターンの教育訓練の一つとして、日本の文化、お茶席でお茶体験してもらうのも、ひとつ新しい方向性だなと思っています。
―ずばり、タイトルにある伝えたい庭のコトとは何でしょう?
ー真鍋さん
庭は生き物なので、どんどん変化していく。その早い変化に合わせて、色々と手を打っていかなければならない、それが美術品や建造物などの文化財とは違う苦労なんだよということを伝えたいです。
庭師のことをお庭さんというのですが、”庭は生き物”というのが一番です。庭は生き物で、だからこそ課題も魅力もあります。今の時代に即した使い方を見つけていきたいと考えています。インスタの写真撮り方など、私たちが得意ではないこともあるので、多くの人が巻き込まれていただき、いろんな楽しみ方を見つけてもらいたいと思っています。
―最後に中津万象園のオススメポイントはありますか?
ー渡邊さん
香川県の人でも、中津万象園に訪れたことのない人もいると思います。1年に1度、10月8日にお月見が開催されます。ライトアップをした夜の中津万象園に入れるのはこの日しかないので、また昼とは違った景色が見ることができます。
ー堀口さん
ゴールデンウイークの時期はツツジなどのお花が池の周りに咲き、年間を通して一番彩りが派手な時期ではないかと思います。また、鳥居回廊は、結婚式の前撮りなどに向いていると思います。
【編集部より】
トークイベントと同時に、インスタライブも配信され、多くの方に中津万象園について知っていただける機会となったのではないでしょうか。ふらっと立ち寄り、お食事や美術館で芸術鑑賞、お庭で散歩などをしてみるのもいいですね。