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U25と考えるセンキョとジブン 2022.8.13(土)

8月13日(土)、トークイベント「U25と考えるセンキョとジブン」が開催されました。
直近では、参議院選挙や今月末に香川県知事選挙の投票が控えているように、「選挙」について考える機会が増えています。それでも、なかなか選挙について周りの人と話し合う機会は少ないのではないでしょうか。
「選挙は自分の人生と関係ない」と思ったことがある人も少なからずいるはずです。でも、実はそんなことはありません。選挙について考えることは、自分の人生について考えることでもあります。
今回のトークイベントでは、若年投票率向上を目指す「NPO法人ドットジェイピー」の香川支部代表の梶川夏希さんを招き、マルタスのスタッフと一緒に、選挙と自分の関係について考えました。



NPO法人ドットジェイピー

若者と政治を結ぶ NPO法人ドットジェイピー | 若者と政治を結ぶNPO法人ドットジェイピー

若年投票率向上を目的にソーシャルインターンシップや政策コンテストを開催しています。 (dot-jp.or.jp)
本部 東京都千代田区、理事長佐藤大吾
1998 年創業。全国 35 拠点にエリア展開し、大学生約 600人が中心となり「若年投票率の向上」を目的として、社会教育の推進を図る活動と情報化社会の発展を図る活動をする NPO 法人。
累計約 40,000 人の参加者数を誇る「ソーシャルインターンシッププログラム(議員・グローバル・NPO)」(2022夏期参加者募集!|ソーシャル・インターンシップ (dot-jp.or.jp))をはじめ、「未来国会」(未来国会2022|若者のための国会デザインコンテスト (miraikokkai.com))、「未来自治体(未来自治体 〜若者による自治体デザインコンテスト〜 (miraijichitai.com))など若年層を対象とした政策立案コンテストを提供。
また、IT・メディア事業など、活動は多岐に及ぶ。

なお、ドットジェイピーは中立的な団体であり特定の政党を支持するものではありません。

梶川 夏希(かじかわ なつき)

出身 香川県坂出市
学歴
2020 香川県立坂出高等学校卒業
2020 香川大学教育学部入学
大学生は教育学部の特別支援領域に所属しており、発達障害や発達障害児に対する指導法 などを学んでいる。

経歴
2020 NPO法人ドットジェイピー香川支部で活動開始
2021 NPO法人ドットジェイピー香川支部代表就任






選挙について知る


ーマルタススタッフ
「選挙」とは、私たちの意見を政治に反映させるために、私たちの代表を選ぶ仕組みです。投票できる権利を「選挙権」といい、現在では18歳以上に与えられています。
データを見ると、令和元年7月に行われた参議院通常選挙では、全国平均が48.8%、丸亀市平均は43.14%と全国よりも低いことがわかります。
そもそも若者の選挙率が低いということは昔からずっと言われていることですが、梶川さんは大学では選挙の話などをしますか?



ー梶川さん
大学の友だちと選挙に行くという話はあまりしませんね。大学の中が期日前投票の会場になっているので、耳にする機会はありますが、実際に選挙に行ったということは聞きません。もちろん団体内では語ることはありますが、団体外の友だちに話しても興味がないと言われたらどうしようと思うことや聞きにくいというのはありますね。

ーマルタススタッフ
選挙についてイメージがわかないということは仕方ないと思います。でも、若者が参加することで変わることがあります。選挙は、民主主義を実現する1つのシステムですので、そこに行かないということは、意見を言わないということになります。意見をいうことが大事になってくるのです。
丸亀市の投票率は、ほかの自治体と同様に10~20代が低くなっています。これは、全国平均より低く、40代以上と比べると約半分となっています。
有権者と投票者の割合を見ると、60代以上の投票率が高いです。20代では、11%の内、約6%しか選挙に行かないのです。
丸亀市の市議会議員選挙は、1016票で当選、落選のボーダーラインとなりました。「行かなくても変わらない」という意見もありますが、少し現実的な数だと思いませんか?梶川さん、数字を見て思うことはありますか?

ー梶川さん
そうですね、「1000」と聞くと自分が行くか行かないかで変わりそうな気がします。親近感を持つ数字だと思いました。




情報を集めよう

ーマルタススタッフ
私たち住民が投票するという行為を行い、議員や市長が決まります。投票で決まったリーダーが、法律や条例、予算を決め、行政の皆さんが動き、住民がサービスを享受できるというサイクルがあります。そして、実際に投票するには、立候補者のことを知る必要があります。
情報を集め方がわからない、情報を知るのが難しいという方もいらっしゃると思います。今の大学生はどのように情報を集めていますか?

ー梶川さん
インターネットが多いと思います。好きな時間に調べられますし、気になった情報だけ見てみようという学生も多いのではないかと思いますね。

ーマルタススタッフ
最近インスタグラムやツイッターなどで選挙に関する情報を発信するなど、デジタルなやり方も増えていますよね。選挙期間中SNSをみて思うことや感じることはありますか?

ー梶川さん
若い人は、ツイッターやインスタグラムを見る時間が多いからこそ、SNS上で「こういう政党があります」「こういう主張をしている人がいます」などと広報してもらえると、若者に目につきやすくなる機会になると思います。

ーマルタススタッフ
例えばこれを参考にして投票に行ったよという話を聞いたことはありますか?

ー梶川さん
私の意見ですが、画面やポスターにはきれいなことしか書かないのかなと思っています。直接会って話を聞くというのが、いいなと思いましたね。特に、街頭演説は行って良かったです。候補者に会いに行く機会というのは少ないと思いますが、会って話してみてどういう人か知る、人柄を見るのはすごくいいことだと思いますね。

ーマルタススタッフ
会って話すというのはハードルが高いのかなと思うのですが・・・。

ー梶川さん
私もそう思っていました。でも、候補者の中には、商店街などでいろいろな人に対して話しかけたり、写真を撮ったりしていた方がいました。そういう方には親近感を持つことができたと思いますね。



なぜ若者の投票率が低いのか

ーマルタススタッフ
昔からの課題とされているのが「若年投票率の低さ」だと思います。梶川さんは、選挙に行くことにしたきっかけはありますか?

ー梶川さん
今でこそ選挙啓発の団体に入っていますが、最初は私も興味がなく、「政治って何?選挙って行く意味があるの?」と思っていましたね。でも、親が選挙に行っているのをみて、行かなくちゃいけないのかなと思い、投票したのが最初です。

ーマルタススタッフ
最初はあまり深く考えていなかったのですか?

ー梶川さん
そうですね、最初は何も調べもせずに、「とりあえず行くことがいいんじゃないか」と思い参加しました。ただフィーリングで選んだ記憶があります。


ーマルタススタッフ
今はどうですか?

ー梶川さん
団体での活動を通じて考えることも増えたので、「こんな香川県になってほしい」という思いを持って、候補者のことを調べるようになりましたね。

ーマルタススタッフ
投票に行く中で変わったことや意識していることはありますか?

ー梶川さん
立候補者は、それぞれの意見や意志があると思いますので、一回は全員を見るようにしています。私は学生ですので、学生にとってどうかという目線にはなりますが、「どうしたら香川県が住みやすくなるか」ということに重きを置いて知るようにしています。


ーマルタススタッフ
学生基準ではどのような政策が気になりますか?

ー梶川さん
やっぱり奨学金のことは気になりますね。あとは、香川県は交通事故が多いという話も聞くので、交通の面も気になります。

ーマルタススタッフ
選挙に行くということをきっかけにして、どう自分の考えを作っていけるかがポイントですね。学生は、選挙に対してどんな考えがあると思いますか?

ー梶川さん
選挙啓発の団体内と外で少し違うと感じています。団体内のスタッフには、政党のことや期日前投票のことを広報するメンバーもいますし、「こういう団体に入っているからこそ行かないと」に考えている学生が多いです。でも、大学の友だちは、「選挙に行く意味はあるのだろうか」と考えている子も多いと思います。あとは、大学には県外から来ている子も多いので、こちらには住民票がないから選挙に行けないという話はよく聞きますね。


ーマルタススタッフ
住民票を移していないので、この県には選挙権がない、地元の投票所まで行くことや手続きが面倒で、諦めてしまうということは昔からよく聞きます。選挙に行く大学生はどんな思いなのかは聞いたことはありますか?

ー梶川さん
正直、理由までは聞いたことはありませんが、「住んでいるからには」という思いや「社会に対しての貢献や、何かになるのではないか」と思っている学生が多いのではないかと思います。

ーマルタススタッフ
結局のところなぜ若者は投票しないのでしょうか?また、どうしたら投票につながると思いますか?

ー梶川さん
私もそうでしたが、「行っても意味がない」「行っても1票だし変わらないのではないか」という人がやっぱり多いのだと思います。ほかの人がしてくれるだろうという他力本願な人は多いと思います。


ーマルタススタッフ
なぜ他力本願になるのでしょうか?

ー梶川さん
「自分がしたところで・・・」というのが大きいのだと思います。背景は、そもそもわからないことが多いのではないかと思います。



ーマルタススタッフ
梶川さんは、選挙に行ったことで何か変わったと感じたことはありますか?

ー梶川さん
周りがというか、私自身が変わったと思いますね。候補者は、現状に対しての理想を政策として掲げている人が多いと思います。それを見ることで、今住んでいる香川県では、「こういうところが課題で、これに対してこういう考えを持っている人がいる」と、香川県のことを知る機会につながっています。


ーマルタススタッフ
「若いときに選挙に行った方がいい」という中には、選挙に行ったから若い人に利益があるということとだけでなく、「選挙を通して地元のことを考えること」で、自分の考え方やいろいろなものとの向き合い方が変わってくるところが大事なのかもしれませんね。

ー梶川さん
はい、私は価値観や考え方の幅が本当に広がったと思います。


ーマルタススタッフ
梶川さんは選挙に行くことで変わったのですね。では、まだ選挙に行ったことのない人は、どうしたらいいと思いますか?

ー梶川さん
そもそも選挙に行かないということは意欲がないということだと思います。そういう人たちは、自分から選挙に関するSNSを見る機会も少ないと思います。だからこそ、私たちみたいな団体が、学生に対して選挙について知ってもらう機会を作りたいです。最初は受動的でもいいので、知ってもらうということが大事だと思います。


ーマルタススタッフ
知ってもらう機会ということですが、今まで良かった取組はありますか?

ー梶川さん
私が行った取組ではありませんが、立候補したすべての政党を集め、政党ごとの主張を学生に聞いてもらうという公開討論会を開いたところがありました。その場に全政党の方がいて、比べながら主張を聞けるというのが画期的で、若者にとって知る機会になっただろうなと感じました。



少し先の未来を考える

ーマルタススタッフ
NPO法人ドットジェイピーの「未来国会」や「未来自治体」という活動では、若者を対象に、「将来こんな風になっていてほしいな」という内容を考えてもらい、政策コンテストをしているとお聞きしました。梶川さんも、そのコンテストに参加されたり、運営されたりしていると思いますが、そこから生まれたことや変わった経験などはありますか?

ー梶川さん
私自身、「30年後の理想の国」というテーマをチームで考えました。今まで、1つのことにフォーカスして考える機会がそもそもなかったですし、子育てのことや交通マナーのことなどは、「先のことだし私たちはそこまで考えなくてもいいか」と思っていました。でも、実際に考えてみるとそんなに遠くない未来のことだと気付き、「もう考えないといけないことなんだ」と焦りを感じました。


ーマルタススタッフ
「30年後の未来を考える」という内容だと、20代のメンバーだと50代の頃の未来ですね。自分が現役世代の終わりころに何を考えるのかということを考えると遠くない気がします。
未来について考えましたが、梶川さんが投票に行くのはなぜですか?

ー梶川さん
私は、ドットジェイピーが行っているインターンシップに参加したことが大きかったです。夏休みの2カ月間、市議会議員さんのもとで、議員さんがどういった活動をしているのかを一緒に体験して、議員さん自体が思っていることに触れ、共感できることがたくさんありました。また、私の住んでいる街や市にたくさんの課題があるということに気付いたことを覚えています。自分が住んでいる街だからこそ、もっと知りたいし、良くしたいと考え、投票に行った方がいいと思いました。



センキョとジブン

ーマルタススタッフ
選挙と自分の人生についてお聞きします。選挙と自分との関係性は具体的にどういったものだと思いますか?

ー梶川さん
「地元のことを知る機会になる」のが選挙だと思います。


ーマルタススタッフ
地元に対する意識が高まったと思いますが、梶川さんはこれから香川県に残りたいと思いますか?将来的にどうしていきたいというのはありますか?

ー梶川さん
率直には、今は香川県を出たいと思っています。20年以上香川県にいたからこそ、外のことを見てみたいというのが一番にありますね。でも、将来的には戻ってきて、香川のために働きたいと思います。今まで選挙などを通じ、地元について考えたという経験もあるので、それを捨ててまでずっと違うところに住みたいとは思っていません。地元のことだから考えていきたいですね。


ーマルタススタッフ
いろいろな考え方で選挙と向き合って来られたのですね。梶川さんにはどのような影響がありましたか?

ー梶川さん
政治を知らないまま社会に出ていいのかと思います。学生は、これから社会に出て働く方が多いと思います。社会に出ると、選挙に行ったことのない、わからないから知らないとは言っていられない。ギャップが生まれるのは怖いなと感じています。


ーマルタススタッフ
選挙を知らないまま社会人になっていくと、どんどん知らないことが増えていって、不安の1つになるのではないかなと思います。社会との接点が無くなってしまう可能性もあると感じます。選挙にいくことで、地域のことを知ることができる。そして、良くも悪くも、自分のことを軸に考え政治に参加することで、よりよいサービスが受けられるということにもつながります。
選挙を考える中で、未来について考えるきっかけになりました。選挙は、過去の実績をみて投票するということもありますが、未来のことを考えて、「こういう考え方、価値、理想があるから投票しよう」というポイントも多いと思います。学生の立場で、未来の香川県に求めることはありますか?

ー梶川さん
今というよりは、将来のことを考えると、やっぱり「住みやすさ」が一番大きいかなと思います。先日の選挙の候補者のポスターを見ると、子育てや福祉のことを書いていた方もいたので、そういうところも足りないのかなと感じています。


ーマルタススタッフ
選挙に行って欲しいという思いはもちろんあると思いますが、何か伝えたいことはありますか?

ー梶川さん
私も最初は、「選挙ってなにそれ?政治なんて意味がわからない」というマイナスのイメージがありました。でも少し関わってみると、価値観が変わりましたし、私としては香川県のことを知る機会にもなりました。「行ってみようかな」と迷っているかたは、まずは選挙に行ってほしいと思います。結果がどうであれ、行くことで知ろうという気も高まると思いますし、自分のモチベーションの向上にもつながると思うので、本当にまずは選挙に行ってほしいです。



参加者の皆さんは、真剣な表情で2人の話に耳を傾けていて、終了後には「選挙を通して自分が変わったという話が印象的だった」「選挙のタイミングで継続してこのような機会があればいいと思う」などの感想が聞かれました。

【編集部より】香川県知事選挙の投票日は、8月28日です。マルタスは、期日前投票の会場にもなっています。もう一度、選挙と自分の未来について考えてみませんか。