世界を知る~持続可能な社会を目指して~ 2022.2.12(土)
| イベントレポート
2月12日(土)、「世界を知る~持続可能な社会を目指して~」と題したトークショーが開催されました。
同トークショーは、公益財団法人オイスカ 四国支部 中讃推進協議会が主催するPOPUP「公益財団法人オイスカ~多文化理解と持続可能な環境づくりへ~」の関連イベントとして開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、POPUPは中止となり、感染予防対策を講じた上でトークショーのみが開催されました。
オイスカ・インターナショナルは、「すべての人々がさまざまな違いを乗り越えて共存し、地球上のあらゆる生命の基盤を守り育てようとする世界」を目指して1961年に創立され、現在36の国と地域に組織を持つ国際NGOです。
公益財団法人オイスカは、1969年にオイスカ・インターナショナルの基本理念を具体的な活動によって推進する機関として生まれ、主にアジア・太平洋地域で農村開発や環境保全活動を展開しています。国内には、綾歌郡綾川町の四国研修センターを含む、4カ所の研修センターがあり、海外からの研修生を受け入れ、農業や食品加工などの技術指導やリーダーシップ研修を行っており、帰国後、地域開発に活躍する人材育成をしています。
今回のトークショーでは、公益財団法人オイスカ四国研修センターに以前、来日。現在は、再来日し、四国研修センターのスタッフであるファビアン ビン ミンソンさんに、母国マレーシアのこと、研修生の指導を通して考える未来の話などをお話いただきました。
マレーシアについて知る
マレー半島とボルネオ島の一部を領域とする東南アジアの国、マレーシア。タイやインドネシア、ブルネイと陸上の国境で接し、フィリピンやシンガポールと海を隔てて接することで、多民族が暮らす国です。
ファビアンさんは、マレーシアの「サバ州」出身。サバ州は、ボルネオ島の北部にあるマレーシアで2番目に大きな州で、「キナバル山」という富士山よりも高い山があることで知られています。美しいビーチや熱帯雨林、サンゴ礁、ここでしか見られない野生動物もいて、近年では、観光事業が発展しています。
サバ州だけでも30の民族が共存しており、言葉や宗教などはさまざまです。伝統的な民族衣装で登場したファビアンさんは、そこでの暮らしや民族の違いなどを話します。
―ファビアンさん
マレーシアは多民族国家なので、信仰する宗教もさまざまです。マレーシア全体でみると、イスラム教、キリスト教、仏教、ヒンドゥー教の順に多いです。私の生まれたサバ州では、キリスト教が一番多く、さまざまな宗教が共存するので、町にはモスクや教会、寺などがありました。これらには、誰でも入れて、観光などでも見学ができたり、そこで仕事をすることができたりします。また、イスラム教は日に5回お祈りする文化がありますが、学校やショッピングモールなどにもそういったお祈りをする部屋が用意されていることもあります。
マレーシアの公用語はマレー語ですが、それぞれの民族によっても言葉が違います。一つの民族でも、住む場所によって発音などが違うこともあり、50種類の言語が話されていると言われています。
私の故郷のサバ州は、約30の民族が住んでいて、一番多いのが「カダザン・ドゥスン族」という民族です。本当は、「カダザン族」と「ドゥスン族」の2つの民族でしたが、今では一緒に呼ばれています。イメージ的には、カダザン族は街の方に住み、ドゥスン族は山や田舎の方で暮らしているという感じです。私は、カダザン族で、サバ州の州都であるコタキナバルが近いところで生まれました。同じカダザン族でも少し言葉が違って、話をするとどこに住んでいるのかがわかることもあるんですよ。
私はサバ州が大好きです。特に宗教が違ってもモスクや教会を使えることは、ほかの地域ではできないこともあるので、すごく素敵な習慣だと思います。
ファビアンさんは、上記のほかにもマレーシアの国旗、食べ物や家のことなど、さまざまな写真を投影しながらお話をしてくださいました。
オイスカでの活動を知る
ファビアンさんが初めて来日したのは、約18年前。当時は、オイスカの研修生として香川県の綾南町(今の綾川町)に研修で訪れました。来日する前は、サバ州にあるオイスカの研修センターで2年間に渡り技術を学んでいたそうで、海外の研修センターでも、さまざまな取組を行っているそうです。
―ファビアンさん
サバ州の海外研修センターで教えてくれる先生は、オイスカの研修で日本に行った人がほとんどで、日本で学んだ農業などの技術を僕のような新しい研修生に教えてくれていました。養鶏やキノコの栽培、食品加工などもサバのセンターで学ぶことができ、そこで作ったものをサバのセンターの前や朝市で売ることもありました。
私はそうして海外のセンターで研修を重ね、日本に行くチャンスをもらいました。日本では、野菜や米などいろいろな農業について学び、私が特に気になったのは、機械と有機栽培についてでした。コンポストを使い、堆肥を作る方法など、有機栽培について学べて良かったと思います。
また、マレーシアのセンターでは、CFP(Children Forest Program)という活動も行っていました。センターのスタッフたちが現地の学校に行って、子どもたちと植林をします。これは、森を大事にしてもらうための活動で、日本のボランティア団体も来て一緒に行うこともありました。
これからの未来を考える
「SDGs」が世界規模で重要な目標になっている現在。さまざまな国と文化を知り視野を広げることが、持続可能でよりよい社会を目指すために必要な一歩になるはずです。今回のトークショーでは、マレーシアの文化とオイスカの活動を知ることで、世界の多様な文化や持続可能でよりよい社会について考えるきっかけになったのではないでしょうか。
―ファビアンさん
私は、子どもたちにいろいろな世界を見てもらいたいと思っています。私は農業が好きで、さまざまなことを日本で学びましたが、その「いいこと」を、子どもたちにも体験してもらいたいです。そうして、若い人につなげていきたいですね。
会場には、公益財団法人オイスカが取り組む、「東日本大震災復興 海岸林再生プロジェクト」のパネル展示も行われました。同プロジェクトは、東日本大震災で津波により流された宮城県名取市の防風林を再生させる取組で、クロマツを種から育てて、美しい風景を取り戻すために尽力されています。
始めは小さい種だったマツが、今では3m近くまで育っていて、少しずつ景色が変わっていく様子が写真で伝えられました。トークショーの最後には、公益財団法人オイスカ四国研修センターの小野隆所長より、このパネルやオイスカの活動について説明する場面もあり、参加者の皆さんは同法人の活動についてより理解を深めました。
【編集部より】マレーシアからオイスカで活動し、これから明るい未来へと繋いでいくファビアンさんのお話に、参加者の皆さんは真剣に耳を傾けられていて、「民族の違いが生活に及ぼす多種の考えがあることを学んだ」、「マレーシアに行ってみたいと思った」などと感想が聞かれました。さまざまな「世界を知る」ことが、何かを考えるきっかけのひとつになったのではないでしょうか。