レポート

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Borderless World―湧き上がる色とカタチ―2021.12.1(水)~30(木)

12月1日(水)から30日(木)まで、アール・ブリュット アーティスト 新池勇斗さんによる展示「Borderless World―湧き上がる色とカタチ―」が開催されました。
新池さんの作品は、色紙などにいろいろな色の丸型のシールを貼り重ねて作り出されます。
2021年には、公募「ZEN展」 (埼玉県立近代美術館)に作品を応募し、特別賞を受賞。さらに今年は、同展の選抜作家展(銀座大黒屋ギャラリー)に出展が決まるなど、活躍の幅を広げています。今回は、ご本人に障がいがあることから、お母様や新池さんの活動全般をサポートしている秋山由美さんも交えてお話を伺いました。

「Borderlessを生きる!」
僕には生まれながらの障害がある。障害ゆえ、これまで慣れ親しんだ環境に長らく留まってきた。そこは最高に居心地よく、色んな人の力を借りながらたくさん学んできたけれど…ふと気付けば、いつのまにか「Border」という名の厚い壁に囲まれていた・・・。
ある時、僕は勇気を出して外に出た。初めて見る風景、初めて出会う人々…。そのうち僕は大切な友を得て、僕の心の色とカタチを伝える旅に出た。部屋を出て自ら動き出し、他者との関係性を育みながら、心からの交わりを楽しむことを知った。僕の分身たち(作品群)が他者とコミュニケーションし、互いに影響を及ぼし合い、混ざり合い溶け合う瞬間を幾度となく体験した。心をオープンに行動すれば、障害のあるなしに関係なく、自由な世界が目の前に広がると知った。それは、境界線のない連続する一つの世界、僕にとっての「Borderless World」なのだ! 僕は、心の奥底から湧き上がる色とカタチを携えて、もっと自由にもっと軽やかに「ボーダレス」 を生きようと決めた。
僕の作品に触れて、やさしい気持ちになってくれたらうれしいです。 
・・・あなたにとって「Borderless」とは何ですか?



制作のきっかけは?

本人が少し体調を崩し、しばらく自宅で休養していた期間に、丸いシールで遊び始めたことがきっかけです。いろいろなシールを貼ることによって次第に一枚の絵になり、回数を重ねるうちに様々な種類の作品が出来上がりました。



展示会はいつから行っていますか?

高松の美容室で何点か飾ってくださったのが初めての展示でした。2021年の夏には、地元の善通寺市の社会福祉協議会にお声掛けいただき、善通寺市総合福祉会館内の展示スペースに飾っていただきました。回を重ねるごとに様々な方からお声掛けいただき、展示する機会が広まりつつあります。



作品のポイントはありますか?

彼は、瀬戸内の風景や自然の中の様々な体験や記憶をたどりながら、あるいは日常生活の中の一場面をクローズアップしながら、障害ある視覚と身体で捉えた独特の世界観を無作為に表現しています。制作しながら、そのイメージは大きく飛躍し変容していきます。そうしたアプローチにより、彼独自の感性が表出するのだと思います。
見る人によって作品の捉え方は違うと思いますし、その人の思いやその日のコンディションなどによっても見え方は違うと思うので、それぞれのイメージを膨らませながら自由に鑑賞していただければと思います。




今回のタイトル「Borderless World―湧き上がる色とカタチ―」には、どのような想いがありますか?

作品を作り始めてから、障がいのある方だけでなく、一般の方々やアーティストの方々との出会や交流の輪が広がりました。さらに、心をひらき一歩踏み出すことで、また新たな世界が広がりました。そのような「Borderless」に生きる姿勢を伝えたいという想いがあり、今回のタイトルにつながりました。
また、表現することの喜びというのは、健常者であれ障がい者であれ、人種や国籍、性別や年齢、絵の上手下手など、あらゆる境界線を超えて、みな同じだと思います。つまり「Borderless」なんです。僕は上手な絵は描けないけれど、障害があるからこそ、出せるものがあるのかもしれません。障がいがあるからこそ、見る人の目を楽しませることができるかもしれません。障がいは必ずしも克服するものでなく、個性として輝くことだってあるよ!ということが伝われば嬉しいです。僕の目はよくは見えないし、みんなのように自由に動き回ることも苦手だけれど、その分、心の声に耳を澄まし、心の眼で捉え感じること、気楽に楽しみながら取り組むことはちょっぴり得意なんです。そんな僕の作品に触れて、みんなが優しい気持ちになってくれたら最高に嬉しいな。そして、多様性を受け入れることのできる「やさしい世界」をみんなで作っていけたら・・・。「Borderless」という言葉には、そんな僕の願いも込められています。



【編集部より】期間中には、多くの方が作品の前で足を止め、新池さんの世界に引き込まれていました。作品を見た方からは、「明るい気持ちになった」、「ほっとする」などの感想が聞かれました。新池さんの「Borderless」な生き方は、様々な人々と影響を及ぼし合いながら、これからもどんどん広がっていくのではないでしょうか。

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