レポート

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インテリアと、心地よい暮らしのつくりかた 2021.4.10(土)

丸亀市綾歌町ののどかな田園風景にたたずむインテリアショップCONNECT(コネクト)。オーナーの髙木智仁さんは、「シンプルで心地よい空間」をコンセプトに、ショップの経営やインテリアを軸とした新築や古民家再生、リノベーションなどの家づくりにも携わり、より豊かな暮らしを提案されています。
マルタスでは、4月1日~21日にPOPUPコーナーでコネクトのショールームとして、イージーチェアや照明などを展示していました。また、4月10日(土)には、「インテリアと、心地よい暮らしのつくりかた」と題し、髙木さんによるトークショーが開催されました。
インテリアとは、家づくりとは?まちづくりとは?髙木さんが思うこれからの丸亀は?約1時間半、さまざまなお話をしていただきました。

できるだけ長く、愛着を持って使ってもらえるものを

丸亀市出身の髙木さんは、もともとインテリアが好きで、東京でインテリアに関わる仕事をしていたそうです。しかし、東京で「まっすぐ歩けないこと」などが嫌になり、うどんを食べられるところで、自分の好きな仕事をしようと地元・丸亀に、2005年、ショップをオープンしました。
「自分がどんな商品を購入したいか考えたとき、愛着を持って長く使えるものをずっと丁寧に使っていきたいと思い、どんなものをセレクトしたらそこに近づくか考えたとき、『北欧』にたどりつきました。北欧のアイテムを単に販売するだけのお店というよりは、自分たちも納得ができる、長く愛着を持って使っていただけるものをご紹介していくことを大事にしています。『インテリア』というと家具をイメージすると思いますが、実は、空間全体に携わろう、言い方を変えると暮らしにまつわるものを全部やりたい、インテリアを中心としながら暮らし全般に携ろうと考えています」



インテリアと家づくり

現在、新築やリノベーションなどを手掛ける「コネクトハウス」も運営する髙木さん。建築士や地元の工務店と連携し、インテリアを軸とした家づくりを行っています。
「家を建てたいと思ったとき、『どんな風に暮らしていきたいですか?』と聞かれることがあると思いますが、それってなかなか言語化できないんですよね。コネクトでは、まずは、『一番身近で毎日使うテーブルを決めてから家づくりをしませんか?』という提案を行っています。毎日使うテーブルならイメージしやすく、想像が膨らんでくるものがあります。ジャストな4人掛け?ゆったりした4人掛けが良い?子どもが多いか、おじいちゃん・おばあちゃんがよく来てくれるならさらに大きなもの?などと話しながら家づくりをしていきます。また、家具だけじゃなく、生活雑貨・照明も重要視しています。中から決めて行くとバランスが取れるんですよ」



デンマークの学生と一緒にリノベーションを考える

「私がお店を構える綾歌町は、丸亀の中でも過疎化進んでいるエリアで、空き家率が高い地域です。お店の中だけで充実させても、周りが空き家や廃墟だらけだとどこが暮らしを良くしているの?と思われるかなと、それは違うと思い、自分たちの身近な地域にある空き家のリノベーションに携わり始めました。あと一番のきっかけとなったのはデンマークの大学で建築を学ぶ学生をインターンで預かり、一緒にリノベーションをしたことですね。以前からデンマークから窓や玄関ドア、フローリングなどの建材を輸入していて、家具や材料を輸入した場合どうすれば長く使えるか、自分自身もちゃんと勉強したいと思い、作っているところ見に行くんです。その時、デンマーク王立芸術デザインアカデミー建築学科の教授と知り合い、生徒をインターンで受け入れてほしいと頼まれたんですよ。彼らをどう受け入れるか考えたとき、自分たちの周りにたくさんある空き家を一緒に空き家をリノベーションする活動ができないかなと思いつきました。教授に相談すると即答で2人行かせると言われ、身近な空き家の持ち主さんにリノベーションさせてくださいとお願いし、デンマークの学生さんとコンセプトから立ち上げました。建物だけを改修するようなリノベーションではなく、地域の可能性を考えた上で、その地域にどのような建物が必要なのか?綾歌町のポテンシャルや丸亀はどんなエリアかをリサーチし、地元の方や行政にプレゼンしました」

フリッツ・ハンセンとコラボ

「リノベーションの相談に来た方と話していると、『私の家は一般的な日本の家だから、こんな家具は合わない』と言われることが多いんです。でも、実は昔から北欧家具は和とよく合うと言われています。2019年の瀬戸内国際芸術祭のとき、北欧の家具ブランド『フリッツ・ハンセン』とコラボして、本島の笠島という伝統建築保存地区で、無料休憩所として使う空き家のリノベーションに取り組みました。築100年以上経った純和風の家でしたが、壁や床の手直しを行ったくらいで工事費用は極限まで抑え、インテリアが入ることで空間の使い方、見え方が変わることにチャレンジしました」
この時の写真が、フリッツ・ハンセンの公式HPに掲載されています。和の空間と北欧の家具、見事な調和に心が奪われます。



髙木さんにとっての丸亀と、インテリア

「四国全般に言えることですが丸亀って、海と山が近く、とても豊かな地域だと思います。ただ、物質的な欲求を満たしていくということでは大都会がいいと思います。東京は遊ぶ場所、ショッピングする場所、出会う場所などが溢れ、日本で一番情報量が多いところですよね。私にとっては情報過多で、何が必要で何が必要ないか、自分の立ち位置がわからなくなってしまいました。とにかくまっすぐ歩けない、自分の行きたい場所にまっすぐ歩けないのはすごくストレスでした。情報が多いと、『これはだめかな』と思ってしまうこともあります。香川だと自分の行きたいところに、周りを気にせずに着実に行ける、これはポテンシャルがあると思います。全部経験していきたいというのもあるし、自分のペースでやりたい、なにより食べ物が美味しくて、気候が安定していて、環境が整っている。そういうところで自分がやりたい方向性でチャレンジしてみよう、と今に繋がっています」

丸亀の可能性とまちづくり

「地域づくりって目の前のことも大事ですが、そもそもその土地がどういった歴史を持っているのか学んでから進んでいく必要があると思います。私は、今、丸亀の歴史などを学び、文脈を捉えて、デンマークの子たちとどんな取り組みができるか、本業も含めどんなアプローチできるか考えていています。また、様々なことにチャレンジできる場作りを作っていきたいと思います。具体的なところでいうと、空き家のリノベーションなどをするときは、マルタスでワークショップなどを開催していきたいと思っています。皆さん、丸亀市で普通に暮らしていると『日常』になってしまいますよね。何に価値があるのか見えにくくなる、案外、外から来た人のほうがその地の魅力に気づいたりします。なので、普段から『ここはほかにはないポテンシャルなのでは?』など、そんな視点を意識的に持ってほしいと思います。それがリノベーションや街づくり・地域づくりのアイデアなどが生まれるきっかけになります。私はいろんな妄想しながら運転していますよ(笑)皆さん気を付けながら妄想してみてください」

質問タイムには、参加者の方からインテリアとデンマークについての質問がされるなど、インテリアやまちづくりについての興味・理解が深まったようでした。
インテリア、北欧、リノベーション、まちづくり…。さまざまな視点から、丸亀について考える時間となりました。