レポート

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【Expanding story ~まるがめの市民活動~】保護者の心の居場所になる。「にこサポ不登校親の会」

マルタスでは、市民活動登録を行う皆さんに、活動に対する思いやこれからのことなどをインタビューしています。
皆さんが行う「市民活動」とは何なのか?活動に対する「思い」とは?
それぞれの活動のスタート、これまで、そしてこれからをお伺いしています。
是非皆さんの活動や思い、踏み出した一歩をご覧ください。

今回は、「にこサポ不登校親の会」の前川さんにお話を聞きました。



不登校の子どもを持つ親が支え合える場を


活動目的と内容を教えてください。


各家庭で不登校の入り口もその経過も出口も違うし、自分のところはうまくいかないけれど、あそこの家庭はうまくいったという違いもあるので、自分たちが落ち込んだ時にお互いに支え合っていけるところがあったらいいなというのが目的です。私は不登校の子どもをどうにかしようとしているのではなく、保護者の心が不安定になることもあるので、そういう部分をお互いに支え合いたいと思っています。活動内容は、最初は座談会というかたちをとっていて、集まって自己紹介しあって悩みを打ち明けるという活動でした。少し前の会では、親が不登校の問題に直面した時にこういう時は親がどういう行動をとっているのかなというのを私自身も知りたいなと思ったので、「朝に子どもが起きないけど、起こしに行ってもいいのかな?」とか、「ごはんの用意はどうしてる?」とかを付箋に書き出してもらってどんどん集めました。書き出していって吐き出してもらうという会もしてみようかなと思っています。


市民活動登録をしたきっかけを教えてください。


そもそも活動が不登校親の会ということで、うちの子どもが不登校になった時に何も情報がなく、同じような境遇の人がいることすら知らずに孤独を感じていたんです。私はPTA活動に長年取り組んでいまして、学校の当時の教頭先生に「中学校で不登校親の会を作りたい」と言ったときにいろいろ考えてくださって、「PTA活動の一環だったら、不登校親の会ができるかもしれない」ということで、中学校の方で不登校親の会をしています。月に1回のペースで活動をしていて、今では8回目ほど開催しているのですが、学校のルールがある中での活動のため、本来はもっとみんなとつながりたい、もっと不登校親の会の存在を知らせたいと思っているのにできていませんでした。そこで、時々マルタスで貸会議室を借りていた時に市民活動があるということを知り、頼りになる仲間と一緒に、PTA活動とは別物の「にこサポ不登校親の会」を登録させていただきました。


中学校で活動していた期間はどのくらいですか。


2024年の4月から始め、そろそろ1年が経とうとしています。4月の総会でみんなに体育館で集まってもらったときに「こういう活動をします」と周知しました。LINEのオープンチャットのQRコードも渡したのですが、そのときはみんなが他人事と感じていたこともあり、「その紙は捨ててしまった」と言われた事もあるんです。だけど、後から入ってきてくれたお母さんが自分の子が不登校になったのを機に「あの時捨ててしまったけど」と言って思い出して来てくれたことがモチベーションにつながり、今も活動が続いています。


中学校で活動されていた時は、その中学校の保護者を対象にしていたのですか?


そうです。丸亀市には学校群があるので小学校にも幅を広げたかったのですが、それはPTAという組織の特性上はみ出せられませんでした。同じ悩みを持っている人に知らせてあげたいというやきもきした思いがありました。


中学校の枠を超えて


マルタスで座談会を開催されるにあたった経緯を教えてください。


マルタスで付箋に書き出してもらうこともしたかったし、座談会が終わった後に保護者同士の本音の話を聞きたかったので、時間たっぷり部屋を借りて、その後みんなで手芸などの手作業やカードゲームをするという過ごし方も、マルタスだったら温かい雰囲気でできそうだと思って、活動をしました。やはり悩みの話ばかりではなく、保護者の方にも趣味を見つけてもらいたいので、手芸や歌をしたいなと思っています。いろいろ楽しみを見つけてもらって、もし子どものことが解決したときに「今まで子どもに情熱を注いでいたけど、解決したら次何しよう」ってならないように、何か趣味を皆さんに持ってもらいたいなと思い活動をしています。



ついに中学校の枠を超えたんですね。


そうです。そこが大事で、マルタスでの市民活動団体として今までのルールから初めて枠を超えて外に出ました。丸亀市の方に気付いて来てもらえるかなと思って、楽しみにしています。


小学校のお子さんを持つお母さんも対象ですか。


そうです。香川県内の小中学校の保護者さんと、高校生の不登校も深刻になってきているみたいなので、そういう方も対象です。


小学校だと対処の仕方が違いますよね。


違うと思います。だから本当に悩んでいる保護者の人にたくさん参加してもらい、その輪が大きくなってきたら校区での話もできるのかなと思っています。話さなくてもいいから寄り添うだけでもできたらいいなと思っています。私自身がそうでしたが、「なんでも悩みを相談してよ」という窓口やフリーダイヤルがありますが、親のその時の心の状態で相談に行けるときと行けないときがあって。そういう時はぬくもりを感じられる、寄り添って同じ空間でいるだけでもいいような活動を目指しています。


参加者からはどんな声がありましたか。


「仲間がいたんだ」とか、月1で開催しているのですがちょっと期間が開いたときに「そろそろ開催してほしい」という声がありました。また、この間1人のお母さんが「とうとううちの子も不登校になってしまったけど、前川さんの不登校親の会の活動があるからまあいいかと思えた」と言ってくれたこともありました。そこで喜んではいけないけれど、私はそういう活動を目指していたので、私の活動は間違ってなかったと、これからも頑張って活動しようと思いました。



マルタスに市民活動登録して変わったことはありますか。


マルタスで市民活動交流会に参加しているうちに、参加者と話している中で自分が活動する目的を自分自身が気付けたとか、今後どのようにするかという道しるべを見つけることができました。マルタスに足を運んで市民活動交流会で勉強したら、自分自身がまとまって次につなげていける。なので私は、マルタスに来るのが大好きなんです。ここに来たら誰かに会えるような気がしています。


これからの活動


今後の展望を教えてください。


ついこの間、5年後の自分たちの団体がどうなっているかというのを新聞記事に書き起こしてみようという会があって、そこで考えたのが、いずれはもしかしたらPTA自体がなくなってしまうのかなと思うようになりました。あと子どものケアは学校や保護者がするかもしれないけど、保護者のケアをにこサポ不登校親の会が何らかの形でできたらすごいすてきだなって思ったんです。実際の居場所というのはなかなか作るのが難しいかもしれないけれど、地域の心の居場所になれればいいなと思っています。


その展望の中には、これまでの長いPTA経験も活かされているのですか。


そうです。ある時、企画することが好きなのかなと思いました。運動会にしても、保護者で見物に行くというよりも招き入れることが好きだと気付いたんです。人が好きで、人と話して、人とつながって広がっていくのがすごくいいじゃないですか。今までPTA活動や民生委員・主任児童委員などいろいろ経験してきましたが、それも子どもが不登校になって、それまでの経験のひとつひとつが私の中でつながり生かされています。PTAを真面目にしていたから、教頭先生も「PTA活動で親の会ができるかも」って導いてくれたのかなと感じています。当時のPTA会長や、PTAの仲間にも応援してもらいました。


今後マルタスをどのように活用したいですか。


来年度から丸亀市で重層的支援体制というのが始まるみたいなんですよ。人員を増やすのではなく、困っている事例に対してテーブルを設けて、重なりあった支援体制を取ると議会で言われているみたいなんです。それで今、市が計画して地域各コミュニティで住民座談会をしている感じなのですが、私はマルタスに聞いた方が早いんじゃないって思っています。マルタスはいろんな活動を見ていらっしゃるじゃないですか。もしよかったら、議会にマルタス枠というのを作ってほしいなあと。そしたら議会でそういうのを持ち込んで話してもらえれば、より一層丸亀市がすごくまとまっていくんじゃないかなと思いました。


これから市民活動を始められる方に対してメッセージをお願いします。


とりあえずマルタスに来て相談してみてください。「こんな活動をしたい」って言ったらマルタスがヒントをいっぱいくれるので、それで自分の中で「やっぱりやってみたい」っていう思いが強くなると思うから、動いてみてください。